(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 バイデン政権の北朝鮮非核化の試みは空疎となり、オバマ政権時代の「戦略的忍耐」へと戻ってしまった──ワシントンではこんな批判がバイデン政権に対して保守、リベラルの両翼から浴びせられるようになった。

 これらの批判は同時に、米朝関係が現在の状態で続くと北朝鮮が完全な核兵器保有国になりかねない、という警告も発している。もしそうなれば日本の国家安全保障には核の脅威が直接突きつけられることとなる。

折衝や交渉にまったく手をつけず

 2022年に入って北朝鮮のミサイル発射は4回に及び、日本への脅威を劇的に高めることとなった。ただし北朝鮮の最近のミサイルはみな短距離あるいは中距離であって、米国への直接の脅威にはならない。そのためトランプ前政権も北朝鮮の短・中距離ミサイル発射に対しては従来の国連による禁止令と制裁の存在を指摘して警告するだけで、正面からの糾弾にはいたらなかった。

 バイデン政権は、北朝鮮のミサイル発射に対してトランプ前政権よりもさらに距離をおく消極姿勢のままだった。しかもバイデン政権の動向を見ている限りでは、北朝鮮政府との交渉にもまったく手をつけていない。