(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)

 ロシアのプーチン大統領は、大きな衝撃を受けていることだろう。これまで中立的な姿勢であった北欧のフィンランドとスウェーデンがNATO(北大西洋条約機構)への加盟を本格的に検討しているからだ。

 ウクライナ侵攻は、多くの周辺国のロシアへの態度を硬化させた。多数の民間人の殺戮は全世界的に反ロシア感情を高めた。ロシアは長きにわたり国際社会で孤立する可能性もある。

 プーチン大統領はNATOの東方拡大への懸念から、西におもねるウクライナに対し侵攻を行ったが、結果として、NATOの東方拡大を助長した。ロシアの投げたブーメランが、見事なまでにロシアをめがけて戻ってきたのだ。

 歴史を振り返ると、欧州は植民地を含め、世界各地での覇権を競った帝国主義の時代から、軍事力を基にした影響力を競ってきた激戦地域である。19世紀に欧州で新興の強国となったドイツも、第1次大戦と第2次大戦で敗北した後は、米ソ冷戦の最前線の地域となった。

 第2次大戦後の1949年に設立されたNATOに対抗して、ソ連(当時)がソ連と東欧諸国、モンゴルや北朝鮮を加盟国として対抗したのがワルシャワ条約機構だ。

 相手からの軍事的脅威を防ぎ、共同で侵略行為に対抗するための集団的安全保障の仕組みだったが、ワルシャワ条約機構は、ソ連が崩壊する直前の1991年7月に失効した(ソ連崩壊は同年12月)。

 名称に掲げられているワルシャワは、言うまでもなくポーランドの首都だが、現在ポーランドはNATO加盟国である。ロシア人にとって実に皮肉なことだ。