(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 北朝鮮の金正恩総書記が核・ミサイル開発に全力を傾ける中、韓国のリーダーが交替する。新しくスタートする尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の前には、重要な課題が残されている。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権の北朝鮮に対する屈従政策を払拭し、北朝鮮の核問題を解決する糸口を見出すとともに、南北関係における主導権を取り戻し、北朝鮮住民を独裁の圧制下から解放するという課題だ。

 過去5年間の北従政策の結果、韓国は北朝鮮に圧倒され、カモにされてしまった。韓国がアイデンティティを取り戻し、南北関係で先導していくことは、並大抵のことではないだろう。

 核保有国を自任する北朝鮮による脅迫は、より激しさを増すことになるだろう。ロシアの一方的な力の行使を目の当たりにした金正恩氏が増長し、無謀な挑発を行う可能性も高い。

 それゆえに、韓国の新政府は、過去とは全く違う、新しい次元の対北朝鮮戦略を講じる必要がある。国家の力を集結し、非核化と南北関係の正常化に向けて強力にドライブをかけるのだ。

 私を含めた脱北者知識人は選挙期間中から、今の劣勢状況を逆転させるための対北朝鮮政策を立案し、尹錫悦陣営に提言している。どんな政策かと言うと、軍拡競争や経済競争による北朝鮮の非核化・正常化戦略である。

 日本支配からの解放とともに始まった韓国と北朝鮮による南北の体制競争は、旧ソ連や東欧の社会主義圏の没落と、北朝鮮の体制が崩壊しかけた1990年代半ばにいったんは決着を見た。韓国の完全勝利である。

 北朝鮮との競争に圧勝した韓国は、北朝鮮をノックダウンした勝利に酔いしれ、臨終を目前にした北朝鮮に太陽の光を照らし(太陽政策)、彼らの再生を助けた。韓国が、高度経済成長に伴う優越感に浸り、北朝鮮を救済の対象として、もはや競争相手ではないと軽視したのだ。

 ところが、北朝鮮は大量の餓死者を出しながらもふんどしを締め直し、韓国が与えた資金で核兵器を開発。韓国を上回るほどの戦力を手に入れた。これは、200万人が飢えて死に、経済が崩壊した北朝鮮で起きた奇跡である。

 正確に言えば、独裁体制最後の虚勢だが……。