(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

1年間で通貨の価値が半減

 1ドル130円という歴史的な円安を受けて、日本でも通貨安とインフレの関係に注目が集まっている。この問題を考えるうえで、トルコのケースは大変、示唆に富んでいる。リラの為替レートは、2021年1月1日時点の終値で1ドル7.4392リラだったが、今年5月8日の終値で1ドル14.9572リラと通貨価値がほぼ半減した。

 こうした通貨リラの著しい下落を受けた輸入インフレ圧力の高まりで、トルコの最新4月の消費者物価は前年比70.0%上昇と、前月(同61.1%上昇)から一段と伸びが加速した(図参照)。先行指標になる生産者物価も同121.8%上昇と7カ月連続で伸び幅が拡大しており、今後もトルコでインフレが加速することを物語っている。

【図:トルコのインフレ率】

 既に食堂や商店で頻繁に値上げがなされていることもあり、物価統計の数値以上にインフレが加速していると感じているトルコの人々は多いようだ。公共料金についても、最大都市のイスタンブールでは4月9日から市内の交通機関(地下鉄、バス、タクシー、フェリーなど)の料金が一律で40%引き上げられている。

 インフレ対策の一環としてエルドアン政権は、今年に入って最低賃金を50%引き上げている。ただ、最低賃金の引き上げ幅は、信ぴょう性が低いとされる物価統計から確認できるインフレ率よりも低く、十分とは言えない。来年6月に国政選挙を控えているエルドアン大統領にとって、インフレ対策は喫緊の課題となっている。