(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 5月9日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が退任した。「共に民主党」政権は終わり、尹錫悦(ユン・ソクヨル)新大統領率いる「国民の力」がこれから大韓民国を牽引する。新しい時代の幕開けだ。

 一方、第20代大統領選挙で尹新大統領と大統領の席を巡って争った「共に民主党」元公認候補者の李在明(イ・ジェミョン)氏は、6月1日に予定されている国会議員補欠選挙に出馬することを表明した。

 現在、これが韓国内で物議を醸している。大統領選挙に落選した候補者は、しばらくの間政界から身を引くのが通例だからだ。彼が補欠選挙で当選すれば、敗北から2カ月も経たないうちに政界へ復帰することになる。

 彼が政治の世界に復帰することを決めた理由は、「大庄(デジャン)洞土地開発不正事件や法人カード不正使用事件に対する検察の捜査に備えるため」という見方が強い。

 大庄洞土地開発不正事件:城南(ソンナム)市長時代に行われた都市開発事業に関する不正疑惑

 法人カード不正使用事件:京畿(キョンギ)道知事時代に、妻が公務用クレジットカードを指摘に不正使用していた疑惑

 なぜなら、国会議員は現行犯でない限り、会期中であれば国会の同意なく逮捕・拘禁されることはないし、会期前に逮捕・拘束されても、国会から要求されれば会期中に釈放される不逮捕特権があるからだ。「共に民主党」は現在、過半数に相当する172議席を占めているから、いつでもこの特権を行使できる。

 文前大統領率いる「共に民主党」は5月3日、検察から捜査権のほとんどを剥奪する法律の公布を決定した。法律施行までの猶予期間は4カ月だが、6月に選挙を控えていることから、選挙犯罪に対する検察の直接捜査開始権は12月末まで維持される。

 これまで、検察が捜査を担っていた6大犯罪の中から、公職者犯罪、選挙犯罪、防衛事業犯罪、大規模事故が外される予定で、今後、直接捜査できるのは汚職と経済事件のみになる。加えて、検察に代わる「重大犯罪捜査庁」を1年半以内に発足させることになっており、これが誕生すれば、検察の直接捜査権はすべて剥奪される。

 国会議員補欠選挙に李在明氏が当選すれば、彼が任期を終える頃に検察は力を失っているだろう。