「経済オンチ」が露呈して市民の失笑を買う李家超氏

 2019年10月6日に、「マスク禁止法」に反対する市民・学生による大規模なデモが九龍地区で起きた。今やコロナ対策でマスク着用が義務づけられ、違反すれば罰金5000ドル(約8万円)が課されるが、当時の香港政府はマスクやスカーフで顔を覆うことを禁止する「覆面禁止法」を立法会の審議を経ない緊急条例の形で制定した。

 この覆面禁止法は後に高裁で「基本法(憲法)違反」となったが、香港政府が上訴。最高裁で合憲判決が出たいわくつきの条例だ。それが今や「義務」となっているのだから、香港市民はこの3年あまりマスクに振り回されてきたと言えなくもない。

「マスク禁止法」反対デモの渦中、デモの隊列にタクシーが減速せずに突っ込む事件が起きた。10代と20代の女性3人がタクシーと商店のシャッターの間に挟まり、うち1人は両足の大腿骨を骨折する重傷となった。

 その場でタクシーの運転手が車から引きずり降ろされ、デモ参加者から激しく殴打されてひん死の重傷を負った。その暴行に加わった35歳の男性には5月10日に懲役3年の有罪判決が確定した。負傷したタクシー運転手は「車の制御が効かなくなった」等の弁明をして、結局、起訴されず放免となった。

 この他、5月11日には香港で天安門事件の追悼活動をしていた団体の57歳の男性に対し禁錮3カ月の実刑判決が出た。国安法を監督、施行する香港国安署からの情報提供要請を拒否したことによる。

 候補者が一人しかいなくても「選挙」と香港(中国)政府は言い張っているので、街角には5月8日の投票日を知らせるポスターが張り巡らされていた。ポスターには「完善選挙制度(完備して優れた選挙制度)」「落実愛国者治港(愛国者による香港統治を着実に実行する)」との文字が踊っているので、選挙の告知というより中国本土でよく見かける「政治宣伝」ということなのだろう。

 次期行政長官に内定している李家超氏も熱心に「選挙活動」を行い、地域を回って積極的に市民と交流する「演出」にいとまがなかった。メディアを動員してのPR作戦だが、時にそれが裏目に出たこともあった。

 4月24日の日曜日、九龍地区の油麻地を訪れた李氏が、コロナ禍の売上不振で閉店セール中の薬草店の店主に、「生意好マ(口ヘンに馬)?(商売はうまくいっていますか)」と呼びかける映像がそのままメディアに流れてしまった。商売がうまくいかず閉店する店主に対し、あまりにも配慮に欠けた言動だと市民のひんしゅくと失笑を買ったのは言うまでもない。行政経験のなさと経済オンチぶりが露呈した映像は、その後ひとしきりSNSで拡散された。