インテルは米国企業なので、国産化という米国政府の方針を受け入れることにはそれなりのメリットがあるが、TSMCは台湾企業であり、採算が合わなければ事業化するメリットは少ない。それにもかかわらず、TSMCが米国での工場建設計画を進めているのは、中国に対する封じ込め政策の重要性を理解しているからである。

 この話は、中国との貿易に経済の多くを依存している日本にとっても同じことが言える。

 今や、日本にとって輸出・輸入ともに中国が最大の貿易相手国であり、純粋にビジネス上の利益だけを考えた場合。米国に追随して、中国との貿易を制限することにはマイナス面も多い。それでも多くの日本メーカーが経済安全保障に対して積極的なのは、中国封じ込めの重要性を理解しているからにほかならない。

 こうした状況で、米国があっさりと対中関税を撤廃してしまえば、そもそも米中対立は何だったのかという話になってしまう。もし、バイデン政権が関税撤廃に踏み切った場合、中国の封じ込め政策は混乱する可能性が高く、日本の対中ビジネスにも大きな影響を及ぼすだろう。

(加谷 珪一)