(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国の新大統領・尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏は、大統領就任演説を自ら推敲したという。当初スタッフがあげた原案は30分程のものだったが、自身で12〜13分に短縮したそうである。

 日本のメディアは、尹大統領が日韓関係についてどう述べるかに注目していたが、日本に対する直接の言及は全くなかった。

 とはいっても演説の中で個別の国家に触れたのは、北朝鮮に関してのみ。外交については「国際社会で責任と役割を果たす国にならなければならない」と大局観を述べただけだった。米韓関係、中韓関係についても言及がなかったので、日本だけがスルーされたというわけではない。

尹錫悦政権の視線は国内問題に集中

 尹錫悦氏の政治・経済・外交の中で最も緊急な課題は、いかに国内の分断と葛藤をやわらげ「協治」の政治に変えていくかである。尹錫悦氏が直面する国内政局は最悪である。

 尹錫悦氏の大統領就任時の支持率は、韓国ギャラップの調査で41%と歴代大統領の中で最低である。

 前任・文在寅(ムン・ジェイン)氏の84%と比べ半分に満たず、就任時の支持率が40%台だったのは朴槿恵(パク・クネ)大統領のみである。韓国国民は概して「革新系好み」とされ、就任当初の支持率は、民主系・革新系の大統領の場合は60〜70%と高く、保守系の大統領は50%台と低くなることが多い。