(北村 淳:軍事社会学者)

 防衛省が我が国独自の反撃能力(長きにわたって誤称されていた「敵基地攻撃能力」)を構築する一助として、長射程巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)を開発する方針を打ち出した(「敵基地攻撃能力」がなぜ誤表現であるかは本コラム2021年9月16日を参照)。

 とりあえず、陸上自衛隊が運用中の12式地対艦ミサイルの有効射程距離を1000km以上に延伸した“12式改ミサイル”を開発し、そのミサイルを1000〜1500発ほど装備して、日本に危害を加えた敵の領域内に反撃を加える能力を手にしようというのである。

 これに対して中国軍陣営からは、「1000発程度の12式改ミサイルによる反撃能力では、中国軍に脅威を与えることなど全くできず、何ら抑止効果を生み出すことはできない」と一笑に付す論評が発せられている。

 また米軍関係者からも、12式地対艦ミサイルの優秀性は高く評価しているものの、12式改ミサイルを反撃用として位置づけ抑止効果を生み出そうというアイデアには疑問符が付けられている。

 このように奇しくも12式改ミサイルの“敵”と“味方”の双方から疑義が投げかけられているのだ。

 なぜ長射程巡航ミサイルの開発は抑止効果を生まないのか。具体的に説明すると、次のようになる。