1.米議会はペロシ訪台を高く評価

 米国政治は民主党対共和党の対立が先鋭化している。

 ジョー・バイデン政権はその発足時に党派分裂の修復による米国の統合を最重要目標に掲げたが、政権発足後1年8か月を過ぎても何ら成果を示すことができないままである。

 そうした深刻な党派対立が続いているにもかかわらず、対中強硬姿勢の支持については党派を超えて一致している。

 8月初旬のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問に際して、バイデン大統領はこれを止めようとしたが、結局ペロシ下院議長に押し切られた。

 その後、超党派の議員団が台湾訪問を繰り返している。

 これは米国が1972年以来、対中外交の前提としてきた「一つの中国」を尊重する姿勢の変更を意味すると受け止められている。

「一つの中国」とは台湾の独立を認めず中国だけが正式な国家を代表するという中国の主張である。

 米国で従来主流派だった中国専門家や国際政治学者はこうした議会の動きに批判的である。

 これに対して議会関係者はペロシ下院議長をはじめとする対中強硬姿勢の実践を高く評価している。

 バイデン政権は「一つの中国」を尊重する発言を繰り返している。ペロシ下院議長でさえこの方針に従って発言している。

 しかし、ドナルド・トランプ政権とバイデン政権の両政権下において、政府高官の訪台、バイデン大統領就任式への台湾政府機関の駐米代表の招待、台湾への武器輸出拡大など米国政府が実際の行動で示している姿勢は、事実上「一つの中国」を否定するものであることは米国の中国専門家も認めている。

 その結果、すでに中国は米国政府が「一つの中国」を尊重するとの発言を繰り返しても信じなくなっており、台湾をめぐる両国間の信頼関係は崩れている。

 現在議会で審議中の「台湾政策法案」では、台湾政府を台湾の人々の合法的な代表として認めることを米国政府に対して要求しており、「一つの中国」を根本的に否定する内容を含んでいる。

 これが成立し施行されれば、米中間の不信感はさらに強まり、中国が台湾武力統一に向かうリスクが一段と高まると強く懸念されている。