ロシアのプーチン大統領に忠誠を誓っているチェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は10月25日、ロシア軍のやり方が「生ぬるい」とした上で、従来からの主張である核兵器を使用して、ウクライナの都市を「大地から消し去り、地平線しか見えないようにすべきだ」と述べました。私たち日本人にとって、チェチェン人というと、ロシアと激しく戦った過去のイメージが強いでしょう。それが、なぜ、いつ、どのように、ロシア追従に変わったのでしょうか。そして、強硬発言を続けるカディロフ首長とはどのような人物なのでしょうか。

(宇山 卓栄:著作家)

通称「残虐部隊」の精鋭を率いる

 カディロフ首長は現在46歳。その忠誠を買われ、プーチン大統領により、10月5日、ロシア軍で3番目に地位の高い「上級大将」の称号を授与されました。カディロフ首長のプーチン大統領への追従ぶりは異常とも思えるもので、自身の14〜16歳の息子3人をウクライナの前線に送ると表明しています。

 3月には、「キエフのナチスどもよ」とウクライナを挑発し、降伏しなければ「おまえたちは終わりだ」とまで言いました。また、ウクライナ軍を「アゾフのならず者」と呼んでいます。カディロフ首長は「残虐部隊」と呼ばれるチェチェンの精鋭を率いています。

 チェチェンは現在、ロシア連邦の一部ですが、かつて、チェチェン人のロシアに対する独立闘争は最も激しいものとして知られていました。チェチェンのあるコーカサス地方では、昔から、民族紛争が絶えません。地政学的に複雑な山岳地帯において、複数の民族が歴史的に独自の言語や文化を維持し、互いに軋轢を生じさせています。

 チェチェン人は民族的にコーカサス人で、言語はコーカサス諸語のチェチェン語です。人口は約150万です。チェチェン人は16世紀以来、イスラム教に帰依しています。