中国が独自に建設中の宇宙ステーション「天宮」で実験施設の役割を果たす最後のモジュール「夢天」が10月31日、海南省の文昌発射場から大型ロケット「長征5号B」で打ち上げられた。

「夢天」は、11月1日、「天宮」にドッキングした。軌道上の位置の調整などを行った後、「天宮」は有人宇宙ステーションとして完成する。

 中国は、独自に宇宙ステーションを保有する国として、旧ソ連(サリュート1971年)、米国(スカイラブ1973年)に次いで史上3番目となる。

 これで、習近平総書記が言う「宇宙強国」になるという野望に向けて、新たなマイルストーンが築かれたことは確かである。

 さて、ジョン・F・ケネディ米大統領が「われわれは月へ行くことを選択する」と宣言してから60年が経つ。

 ケネディ大統領はライス大学で1962年9月12日に行った歴史的な演説で、米国はソ連との宇宙開発競争に全力を注ぐことを断言した。

 60年経った今、米国は中国との新たな宇宙開発競争に突入している。

 いうなれば宇宙における覇権争いである。すなわち覇権を手にしたものが宇宙のルールを決めることができるのである。

 宇宙空間には国境の概念がない。人工衛星を利用すれば、地球上のあらゆる地域の観測や通信、測位などが可能となる。

 また、宇宙開発には軍用と民用の境はない。米ソ冷戦時代に打ち上げられる衛星の75〜80%は軍事衛星であったが、現在は80%が民間衛星である。

 そして、軍は民間衛星の情報を買うようになった。強靱な宇宙産業を育成することが、とりもなおさず宇宙における軍事力を高めことになる。

 これは、軍事と経済社会を結びつけることで軍事力の強化と国家の振興を同時に目指す中国の「軍民融合」の施策に通じるものであろう。

 世界では、軍事、宇宙、医療、バイオなど、最先端の科学技術の研究は、軍、政府、産業界、学術界が一体で取り組んでいる。

 一方、日本では戦後ずっと、第2次大戦中、研究者や企業が戦争に関与したとの反省から、国防の研究開発をタブー視する空気が強く、民間研究機関の軍事研究が行われてこなかった。

 日本には「宇宙の平和利用」に固執する傾向があるが、米・中・露などは「宇宙の軍事利用」を積極的に推進している。

 現在、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の観測や通信、測位などが可能となる。

 このため主要国は、軍事施設などを偵察する画像収集衛星、弾道ミサイルなどの発射を感知する早期警戒衛星、通信を仲介する通信衛星や、武器システムの精度向上などに利用する測位衛星をはじめ、各種衛星の能力向上や打上げに努めている。

 もし、これらの人工衛星が対衛星兵器(ASAT:anti-satellite weapon)によって、破壊又は無力化されたら、部隊の運用ができなくなってしまうであろう。

 2019年12月に創設された米宇宙軍トップのジョン・レイモンド宇宙作戦部長が朝日新聞のインタビューに応じ、「宇宙はもはや平和的空間ではなく、戦闘領域になった」との認識を示した。

 ところで、本稿では中国の近年の宇宙開発の目覚ましい進展状況と我が国の宇宙プラットホームにとって大きな脅威となる中国のASATの開発状況を紹介したい。

 以下、初めに宇宙利用に関する国際合意の現状について述べ、次に近年の中国の宇宙開発の進展状況について述べ、最後に中国のASATの開発動向について述べる。