東京の歴史ある「名湯」がまた一つ、姿を消そうとしている。

台東区浅草で江戸時代から続く銭湯「蛇骨湯」(じゃこつゆ)は、2019年5月いっぱいでその歴史に幕を下ろす。

最後の土曜日の夜、露天風呂は人でいっぱい

蛇骨湯は、東京湾岸で湧出する天然温泉「黒湯」を特徴とする。浴槽の壁には富士山の絵が描かれ、屋外には石組みの露天風呂が設けられている。

令和元年に入っても営業を続けてきたが、ウェブサイトで公表されている通り5月31日が最終営業日となる。

最後の土曜日となった5月25日の夜。J-CASTトレンド記者が銭湯を訪れると、すでに4〜5人ほどの利用客が券売機の前に並んでいた。券を購入し、番台に渡して脱衣所に入ると、先客たちはロッカーの置かれた壁際にずらりと沿って着替えていた。「ちょっとすいません」と、他の人にぶつからないように空きロッカーを探した。

湯で体を流して入ろうとした露天風呂は、すでに人でいっぱいだ。狭い浴槽に10人ほどが窮屈そうに入っている。外の椅子に座って空きを待つ「上がり待ち」も発生していた。

一人が湯船から上がったタイミングを見計らい、記者は浴槽の端に「体育座り」で浸かった。お湯は40度を超える程度だったが、すぐに身体が温まるのを実感した。

4〜5人の団体客が一斉に湯から出ると、個人客のひとりは「待ってました」とばかりに足を広げる。だがそれも束の間。すぐに新たな客が入浴してくると、不満げな表情を浮かべながら足を元に戻していた。

一方、内風呂は比較的すいていて、すんなりと入浴できた。足を伸ばして湯に浸かることができたが、湯の色が黒いため、段差に気づかずにつまずきそうになった。

日本語に英語、中国語が聞こえてくる

この日訪れていたのは個人客、親子、知り合い同士など様々。人々は褐色の湯に浸かりながら、仕事の話やプライベートの話など、思い思いの話をしていたようだ。

だが、聞こえてきたのは日本語だけではない。耳をすませば、英語、中国語など多様な国の言語が飛び交っていることに気づく。

日本を代表する観光地・浅草では、銭湯すらも国際色にあふれていた。

湯から上がり、着替えを終えて休憩所に出ると、客たちが瓶の清涼飲料水を片手にくつろいでいる。それをしり目に、のれんをくぐって銭湯を出ると、また新たな入浴客が店に入ってきた。

「こんなに賑わっているのに、本当に閉店してしまうのだろうか」

初めて訪れた蛇骨湯だったが、なぜか名残惜しい気持ちになってしまった。