AI(人工知能)研究の第一人者として知られる松尾豊・東京大学大学院教授が2021年4月9日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で行われたイベント「AI・人工知能EXPO春」で講演した。

日本のDXの特徴は

講演の背景にあるのは、最新技術でビジネスに変革をもたらす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の動きだ。松尾氏は現在、日本ディープラーニング協会(JDLA)の理事長を務めている。ディープラーニングとは「深層学習」とも呼ばれ、AIを活用して、より複雑な判断ができるようにする技術を指す。

ディープラーニング分野では、2012年に画像認識精度が高まり、18年には自然言語処理でも急激に発展した。松尾氏は活用事例として、施設入館者の体温測定や顔認識をあげる。これらはコロナ禍で需要が高まっている技術で、同じく医療系ではワクチン開発にも寄与していると紹介した。

日本のDXの特徴は、アナログのものをデジタル化(デジタイゼーション)した上で、業務効率化や付加価値向上に活用する(デジタライゼーション)する流れが得意なことだと指摘。タクシー業界の場合、かつては乗客と配車オペレーター、ドライバー間の連絡が人力で行われていた。海外ではUber(ウーバー)のような新しいビジネスモデルがいきなり生まれるが、日本では位置情報をデータ化(デジタイゼーション)し、既存業務の効率化(デジタイゼーション)を行うように段階を踏んでから、新モデルへと転換するという。

そうした流れの中で、ディープラーニングの重要性が増している。JDLAでは活用に寄与できる人材育成を行っており、高等専門学校生への教育をはじめ、ビジネスパーソン向けの「G検定」、エンジニア向けの「E資格」などを用意するほか、5月からは基礎講座「AI for Everyone」を開講する。松尾氏は、JDLAでの支援活動を通して、来場者らが企業で活躍しやすいような環境を作っていく必要があると語った。