国家公務員の定年を引き上げる国家公務員法改正案について、政府・与党は22日、今国会で廃案とする方向で検討に入った。新型コロナウイルス感染拡大に伴う民間の雇用悪化を受け、「官優遇」批判が高まりかねないためだ。ただ、唐突な方針転換は与野党に波紋を広げている。

 「民間に先駆けて一律に65歳に延ばすのは早急ではないのかという批判もある」。22日の衆院厚生労働委員会で、安倍晋三首相は改正案を見直す可能性に改めて言及した。

 同改正案は検察庁法改正案を含む「束ね法案」。内閣の判断で検察幹部の定年を延長できるようにする内容で、世論が激しく反発。このため、首相と自民党の二階俊博幹事長が18日の会談で今国会成立を見送り、継続審議とする方針を確認していた。

 二階氏は22日、自民党の森山裕国対委員長と協議し、「政府から廃案にするという指示を受けていない」として、現時点では継続審議とする従来方針を確認。今後、党内調整の難航も予想される。

 方針転換は首相と菅義偉官房長官の関係にも影響する可能性がある。国家公務員法改正案は菅氏が主導したとされ、自民党ベテランは「菅氏が霞が関に恩を売り、連合にも配慮することで影響力を保つためだった」と語る。

 定年延長は首相が掲げる「全世代型社会保障改革」の一環で、民間企業にも波及させる狙いだった。しかし、首相は新型コロナ対応で後手との批判を受け、支持率が下落していることなどを考慮して判断したとみられる。

 一方、今回の「朝令暮改」は、官公労の支持を受ける立憲民主党をけん制するとともに、黒川弘務・前東京高検検事長の賭けマージャン問題など一連の混乱をリセットする思惑もありそうだ。

 立憲、国民民主両党は、検察幹部の定年延長規定を批判する一方、一般公務員の定年延長には賛成の立場。検察庁法改正案に反対した野党への「首相の意趣返し」(野党中堅)との見方もある。国民中堅は「揺さぶりというよりも嫌がらせだ」と不快感を示した。