日本の植民地だった戦前の台湾で、日本語で台湾文学を探究した青年たちの軌跡を追ったドキュメンタリー映画「日曜日の散歩者」が19日から日本で公開される。公開を前に来日した黄亜歴監督は「新しい文学を創造することで、心の自由を獲得しようとした」と抑圧的な時代に埋もれた詩人らの苦悩に思いをはせた。

 映画は、1933年に日本留学を終えて台湾南部の台南で詩人団体「風車詩社」を結成した楊熾昌ら当時10〜20代だった青年たちに焦点を当てる。日本で西洋モダニズム文学の影響を受けた楊らは、シュールレアリスムなど当時としては前衛的な作風を取り入れ、台湾文学に新境地を切り開こうとした。黄監督は「30年代の台湾が日本経由で最先端の芸術を導入していたことが分かり、衝撃を受けた」と映画化のきっかけを語った。

 「日本文学から離れた別個の台湾文学が存するかどうか」。映画で引用される青年たちの言葉には、植民地宗主国の言語で創作することへの葛藤がにじむ。

 日中戦争と国共内戦後の国民党独裁政権下では言論弾圧などの迫害を受け、風車詩社の詩人たちは銃殺されたり、投獄されたりした。親族への聞き取りや一次資料で取材を重ねた黄監督は「心は人が生まれながらに持っているものだ。しかし、その自由を求めれば求めるほど、残念な結果になってしまった」と日の目を見なかった詩人たちの不遇を惜しむ。

 民主化が定着した台湾では近年、風車詩社の再評価が進んでいる。この映画は昨年の台湾版アカデミー賞「金馬奨」の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。黄監督は「台湾と日本では観点が違うかもしれないが、相互理解が深まると思う」と日本公開に期待を示した。