今も続く縁故採用

街中では就職活動中だと思われる学生さんをよく見かけます。今は売り手市場だとは言え、自分の希望する企業から内定をもらうためには、かなりの研究と地道な努力が必要なことに変わりはないでしょう。

さて、みなさんは「縁故採用」と聞くとどんなイメージを持たれるでしょうか。取引先のご子息・ご令嬢が能力とは関係なくコネで就職してきて扱いに困惑する、厳しい就職活動を戦い抜いて入社した人に比べて不公平など、どちらかと言えばネガティブな印象をお持ちの方も多いのかもしれません。

一昔前までは、縁故採用は先述のようなイメージ通り、取引先との関係強化(戦国時代で言えば、他国と婚姻関係を結ぶことによって同盟関係となるような)のためや、社長が息子に会社を譲る準備のためといったように、企業側も人材にゆとりがあって多少の無理が効いた側面があり、能力を問わない縁故採用が多く行われていました。

しかし、近年は縁故採用と言えど、企業側も戦略をもって採用しているケースが増えているようです。

近年の縁故採用は採用の一ルートに過ぎない

人材不足が深刻になっているため、企業も能力のある人材を確保しようと躍起になっています。縁故採用も優秀な人材発掘のため有効に活用しようという流れになっているのです。

縁故採用と一口にいっても、それが中途採用か新卒採用なのかで意味合いが変わってきます。中途採用の場合は即戦力を求めているので、関係先から自社が求めている能力に見合った人材を紹介してもらえれば、こんなにも確実なことはありません。不特定多数の労働市場から不確かな人を選んでしまうリスクが下がります。大企業はともかく、人材を集めることが困難な中小企業では、今に限らず縁故採用によって求める人材を確保するのは当然のことでした。

また、新卒を縁故採用するケースでは、事前に人柄や能力を紹介者からある程度担保してもらうことが可能です。最近の新卒縁故採用では、第一次面接を免除するといった具合に、採用過程を通常採用とは別にする手法を取り入れている企業も多いようです。縁故だから即内定ではないのです。昔のようにコネがあるから能力を問わないのではなく、新卒の能力を判断する一手段となっています。

中途採用にしろ新卒採用にしろ、最近の縁故採用は採用される人にとって特別楽なルートのものではなく、数ある採用ルートの一つとなってきているようです。

縁故採用のメリット・デメリット

縁故採用のメリットは、先ほど述べたように人柄や能力が事前にある程度判断できることです。昔のように能力のない人材を無理やり押し付けられるのであれば、企業にとってマイナスでしかありませんが、近頃の縁故採用では、戦略としてそのような人材を受け入れることはしなくなっています。言い換えれば、今までのように知り合いだから、身内だからというだけで能力のない人材を抱えてしまう企業は淘汰されていくでしょう。

逆にデメリットとしては、縁故であるがゆえに、仮にミスマッチが起こったとしても企業側も対応に困る、本人も簡単には辞めづらいという点があるでしょう。また、能力のない人を取ってしまった場合に、既存社員の士気が下がってしまうこともあり得ます。

通常採用であれ、縁故採用であれ、企業にとってはよりよい人材を得ることが一番の目的です。企業にコネがあるのかは、その人のネットワークの広さを判断する材料の一つに過ぎない時代になっているのかもしれません。

(大竹 光明/社会保険労務士)