近年胃がんの死亡者数が減少傾向に

かつて胃がん大国と言われた日本ですが、国を挙げての胃がん検診や治療の進歩などによってここ十数年間胃がんの死亡者数は約5万人で横ばいでした。

ところが5〜6年前から明らかに我が国の胃がん死亡者数が減少し始めました。その理由はピロリ菌感染率の低下にあると考えられます。

胃がん発症とピロリ菌の深い関係

実は我が国の胃がんの9割以上にピロリ菌の感染が認められ、ピロリ菌に感染したことのない胃からはほとんどがんが発生しないことが明らかになっています。ピロリ菌は、かつては我が国の土や井戸水の中に幅広く生息し、ピロリ菌に汚染された食べ物や水を口にすることで、大半の日本人の胃の中でピロリ菌が持続感染し、親から子へと経口感染していったと考えられています。

しかしその後の衛生環境と食生活の変化により、日本人のピロリ菌感染率は徐々に低下し、最近の中学生では約5%といわれています。

胃がん予防のためのピロリ菌対策

このように将来的にはピロリ菌に関連した胃がんの発生が激減するのは間違いないと思いますが、当分はピロリ菌に感染した高齢者を中心に効率的な胃がん対策が必要です。

ピロリ菌に感染した胃は、少しずつ粘膜の萎縮が進み、潰瘍やがんを発症しやすくなります。現在ピロリ菌を3種類の薬で排除する除菌治療が健康保険で受けられます。一度ピロリ菌に感染しても除菌に成功すれば胃がんを発症するリスクが減ることがわかっています。

そこで現在考えうる最善の胃がん対策は、

ピロリ菌に感染している、あるいは過去に感染したことのある胃がんリスクを有する対象を見つける。 胃がんリスク対象者には定期的な胃がん検診や胃内視鏡検査を行う。 ピロリ菌感染者には積極的に除菌治療を行う。

以上の3点です。1の検診は胃がんリスク層別化検査あるいはABC分類などという名称で、いくつかの市町村や職場の検診で行われていますので是非問い合わせてみて下さい。

(古家 敬三/医学博士)