中国に偽ウルトラマン?

中国のアニメCG制作会社が、7月10日のウルトラマンの日に、北京で、ウルトラマンが登場するCGアニメ映画「鋼鐵飛龍之再見奧特曼」の制作発表を行いました。

その際に流された予告映像にはCG制作会社オリジナルと思われるウルトラマンなどが使われ、また制作発表の会場には、全身にボディペイントを施したウルトラマンもどきの人物も登場したため、ウルトラシリーズに関する著作権を保有する円谷プロダクションは、直ちに抗議声明を発表しました。

今回の中国企業によるウルトラマンの使用について、円谷プロの主張は通るのでしょうか。ウルトラマンを巡る複雑な著作権の状況を含めて解説します。

初期ウルトラシリーズの海外著作権の所在は曖昧

ウルトラマン、ウルトラシリーズを巡る世界的な著作権の争いを知らない日本人は、今回の中国企業が制作発表会見で登場させた、本来のウルトラマンとはかけ離れた完成度のボディペイントウルトラマンをみて、円谷プロの主張が容易に認められると考えるでしょう。

しかし、ウルトラマンの著作権を巡る問題はかなり複雑です。

実は、日本の最高裁においても、円谷プロの初期ウルトラシリーズについては、海外の企業に、海外での商品化権が譲渡されていると認定されているのです。また、中国の最高裁でも、同様に初期ウルトラシリーズについては、円谷プロに海外の商品化権などの著作権はないとして、円谷プロが敗訴しています。そのため、円谷プロが、ウルトラシリーズの著作権者として、差止や損害賠償を求めることは簡単ではありません。

もっとも、中国企業が仮に正規の著作権を有しているとしても、中国(海外)における著作権の対象は、ウルトラマンタロウまでの初期ウルトラシリーズに限られますので、今回の一連のウルトラマン利用のうち、初期ウルトラシリーズのものといえないものは、円谷プロにも勝機があります。

たとえば、あのボディペイントウルトラマンも、ウルトラマンに関する「新作」と判断されれば、その著作権は円谷プロにあるとされる可能性があるわけです。

著作者人格権侵害の有無も判断材料

また、この問題を考える上では、著作権法のルールとして、著作権を譲渡した場合にも、もともとの著作者に帰属する著作者人格権までは譲渡されず、元の著作者に残ることも重要です。

そのため、ウルトラマンに関する著作権の一部を保有する者であっても、元の著作者である円谷プロに残されている著作者人格権を侵害する行為、たとえば著作物たるウルトラマンの無断改変や、著作者の名誉を害する行為などは、円谷プロの承諾がない限り許されないと判断される可能性もあります。

そこで、円谷プロとしては、今回使用されたウルトラマンが、初期ウルトラマンではなく「新作」であることや、ボディペイントウルトラマンの利用態様などが著作者人格権を侵害するとして、使用の差止や損害賠償を行うことなどが考えられます。

ただし、訴訟の勝ち負けは別として、円谷プロとしては、海外での訴訟がまた1つ加わることになり、莫大な訴訟コストがかかってしまいますし、また仮に訴訟に勝訴しても、わずかな賠償金を得るだけで終わってしまったり、差止が認められた頃には既に違法なウルトラマンの使用が世間に広く周知されてしまい、差止の意味が大幅に失われてしまうといった展開も予想されます。

そのため、いずれにしても、円谷プロにとっては、一連の海外でのウルトラマンの著作権を巡る問題については、相当に頭の痛い問題だと思います。

(永野 海/弁護士)