個人の髪型の自由は憲法でも保障されていると考えられている

先日、髪が生まれつき茶色であるにもかかわらず、高等学校から黒く染めるよう強要された上、報道によれば学校行事への参加や名簿からの削除もされた等ということから、精神的苦痛を受けたとして、大阪府内の高校の女子生徒が府に損害賠償を求める裁判があったとのニュースがありました。

これまでも、個人の髪型については、地毛に手を加えるパーマを禁止する校則などに違反したことで、自主退学の勧告が出されたことを巡って裁判になった事案などがありました。

しかしこういったケースと、今回の事案とは「もともとの地毛の色を変更して黒く染めるよう求められた」という点で根本的に異なっています。

個人の髪型は、個人の自尊心あるいは美的意識と結びつくとされていて、個人が髪型を自由に決める権利は、公権力から干渉されることなく自分で決定できる権利の一つとして憲法13条の幸福追求権で保障されていると考えられています。
髪型をどのようにするかということが、このように憲法上の権利として保障されていることから、もともとの髪型・髪の色についても、そのまま個性と認めてなおのこと尊重されるべきといえるでしょう。

学校生活における一定の決まり事・ルールについての考え方

他方、学校という集団での生活においては、一定の決まりごとを決めることで、学校生活の秩序維持・生徒の非行などを防ぐ必要性があります。校則でパーマ・毛染めなどの禁止を規定するのも、高校生らしい髪型を維持し、髪型の乱れからくる非行を防ぎ、勉学に励ませるという目的で設けられているのが一般的ではないかと思います。

今回のケースでは事実として何があったかが大きく問題になって来ると思いますが、仮に報道通りの事実があったとすれば、一律に校則から外れた生徒について、地毛の色や髪質を問わずに校則に沿った対応を求めたことが強要にあたるか・校則による制約が許されるかが問題となります。

地毛を変えないことへの過度なペナルティは不当な制約・違法となるか

髪の色がもともと茶色なのであれば、黒にするよう強要するとなると典型的には地毛を変更することで髪型が乱れることから来る非行を防ぎ,勉学に励ませるという校則の目的から外れてくるといえます。

また、地毛を変更させること・それに従わないことのペナルティがどういった内容であったか、その制約の程度が権利の侵害にあたらないか問題になります。報道にある、学校の行事に参加させない・学校の名簿からも外すとなると、学校生活を送ることができなくなるほどの強い制約になってきます。

そうなると個人の権利への不当な制約にあたり,違法ではないか問題になってきます。裁判では、女子生徒と学校との具体的なやりとりの内容、校則の内容や、地毛の変更に従わないことのペナルティの内容などが争点になってくるものと思われます。金髪の外国人留学生であっても黒く染める場合でも同様の問題が生じてくるといえるでしょう。人にはそれぞれ個性があり、その違いは様々なところにありますが,そういった違いを尊重していくことがまずは人権尊重の第一歩ではないかと思います。前述のように事実関係がどのようであったかが、裁判で争われることと思いますが、今後の審理の行方が注目されるところです。

(片島 由賀/弁護士)