近年、美容を求める女性が耳にする「ヒト幹細胞コスメ」。まつ毛美容液やフェイスマスクなど化粧品にとどまらず、美容サービス、エステサロン、美容クリニックなどでも使われる事があります。しかし、「ヒト幹細胞コスメ」って良いのはなんとなくわかるけど一体どうなっているの?という誰にも聞けないお悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。そこで、幹細胞(培養液)の国内外美容市場に対する実態調査を行なっている株式会社ジャパンベストヒール代表取締役西島直子さんの取材をもとに詳しくお伝えします。

幹細胞培養液とは

まず「ヒト幹細胞コスメ」とは、ヒト由来の幹細胞培養液を配合した化粧品の一つです。そもそも幹細胞培養液とは、幹細胞を培養した際に幹細胞から分泌されるタンパク質を含んだ培養液です。大きく3つの種類があり、植物とヒト幹細胞が化粧品に利用され、ヒト幹細胞は美容クリニックで利用されています。

「動物由来」 プラセンタが認知されています。ヒトの皮膚幹細胞と似ている羊の毛根や胎盤から採取された幹細胞を用いて利用されます。

「植物由来」 傷ついた細胞を再生させる力を持つ、特有の細胞を持った幹細胞で培養する過程で植物細胞から抽出したエキスがコスメに使われます。高い抗酸化力と保湿力で、肌老化の原因となる活性酸素の除去、若々しい肌へ導きます。

「ヒト由来」 美容業界で多く使用されているのは、ヒトの皮下脂肪から採取した脂肪由来の幹細胞で、その培養液が美容に使用されます、ヒト幹細胞培養液に含まれる成長因子が表皮幹細胞や真皮幹細胞に働きかけ細胞を活性化させることから、高いエイジングケアとして期待されています。

幹細胞コスメ市場の広がり

幹細胞コスメが市場に登場したのは、2007年頃ですが、ブームの火付け役となったのは2009年にランコムから発売されたAbsolue Precius Cells(リンゴ植物性幹細胞を使用)だと言われています。そして、日本で最初に発売されたのは、2012年、アンチエイジング社のヒト幹細胞培養液。美容目的として幹細胞コスメの原料であるヒト幹細胞培養液の研究開発は、米国や韓国が先行しています。国内の美容業界で注目され始めたのは2015年頃ですが、今は幹細胞コスメとして市販されているだけでなく、美容クリニックなどで幅広く使用されています。美容クリニックのメニューでは費用がかかるものの、エイジングケアが期待できることから、取り扱いを始めるクリニックも年々増加傾向にあります。世界の幹細胞全体の市場予測は、2015年の62億ドル(日本円にして約6600億円)から今後は188億ドル(日本円にして約2兆円)と3倍にふくれあがると予想されています。美容業界でも同様の傾向が見られると推測されており、今後も幹細胞コスメ市場は目覚しく成長を続けるでしょう。

日本の化粧品メーカーの取り組み状況

日本の化粧品売上トップ5社は資生堂、コーセー、ポーラ・オールビズ、マンダムです。ヒト幹細胞は培養液の組成こそが大切で、また長期保管方法について成果をあげることが必要になります。国内のトップ5社は慎重に、美容液として幹細胞が作用する確実なエビデンスを用意するために日々研究が進められています。一方、エステを中心に化粧品を製造していたロート製薬は、2015年に独自開発の「ステムSコンプレックス」という幹細胞を増殖させる成分を用いた幹細胞コスメを発表しています。

これからの展開と海外の動向

ヒト由来の幹細胞培養液は、GMPに準拠した製造加工しか認められておらず、非常に高い安全性が求められています。そのため、大量生産には難しく、コスメの価格も高くなりがちです。しかし、今後研究が進むことで生産の効率化が実現すれば、原料・商品価格も下がり、より多くの人に使ってもらうきっかけになります。海外では、発毛を期待したまつ毛美容液やヘアケア商品なども多く発売され、幹細胞コスメに対する需要は日本よりも高く、幹細胞コスメの市場は、美容大国アメリカではすでに1兆円超、韓国でも1000億円に達しています。「再生」をテーマにした「ヒト幹細胞培養液」が肌本来の再生力を呼び覚ますことで化粧品に使われはじめたように、最先端のバイオサイエンスがもたらす成分によってエイジングケアは大きく進化していくことでしょう。

(上野 由理/エステティシャン)