接待の極意 〜接待成功へ導くもの〜

上田 由佳子 うえだ ゆかこ
NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師

商家に生まれ、たくさんの人と関わる中でおもてなしサービスに興味をもつ。日本料理店等、飲食業界にて接客の仕事に従事する中で、お客さまが来店したくなる接遇サービスとは何かを探求し、高い顧客リピート率を達成する。その後、大手外食産業にて女将・店長等の人材育成に携わる。現在はマナー講師としてさまざまな業種の研修を担当、メディア対応等活動を行う。

ビジネスにおける接待の意味

 さまざまなサイトや情報誌でビジネス接待の必要性が問われている。ネットでも「接待、面倒くさい」や「悪い慣習」などの書き込みが見られる。2016年にはある大手企業の社員90人が過剰接待を受け、懲戒処分となった。その企業では以前から接待を受けることを禁止していた。
 ビジネス接待の必要性について論議するつもりはないが、少なくとも接待というものの本質を理解しているかどうかが問題ではないだろうか。「どうせ会社のお金だから日ごろ行けないところに行こう」「取引先を誘いさえすれば、会社のお金で趣味のゴルフができる」などと勘違いしているサラリーマンが多いと感じる。それならば接待をする意味はなく、必要もないだろう。
 私は20年近く飲食業界におり、1万件以上の会食接待の場面を見てきた。その中でも「できるビジネスパーソン」と「できないビジネスパーソン」の差は、この接待の目的を理解しているかどうかだと考えている。
 業務時間中は他の仕事もあり、話す時間も限られている。「接待」をすることで、会社外で共通点ができ、強い信頼関係を築くことができるのである。競合他社より相手との信頼関係を強く構築できると、他にはない情報も入りやすくなり今後のビジネスも円滑に進めやすくなるということだ。

接待に失敗しないために必要なこと

 とはいえ、このビジネス接待が失敗に終わると、会社全体の信用を失いかねず逆効果になってしまう。
 相手の印象に残らない時間になることや、悪気はなくても失礼な態度や行動をとってしまうなどのマナー違反があり相手の気分を損なうことになってしまっては、失敗と考えざるを得ない。影響の大小はあるがビジネスに直結する。
 失敗を回避するには、相手のことを考えて行動する「おもてなし」が必要だろう。いわゆる「接待マナー」を身につけることである。自分目線ではなく相手目線で考えて行動することが重要となってくる。
 また接待マナーができているか否かは、相手からも評価されているという点も意識しなければならない。できていなくてもそれを相手から伝えられることはほとんどなく、気がつくと遠ざけられているということもあるため注意が必要だ。

接待成功の秘訣、7割が「事前準備」

 接待マナーには四つのポイントがある。「事前準備」「会話力」「一般マナー(テーブルマナーを含む)」「去り際、お礼」である。
 特に接待を成功させるために必要な行動の7割は「事前準備」であると私は考えている。これにより他のポイントの三つが生かされるのだ。これを怠っては、ほとんどが失敗に終わるだろう。「事前準備」とは、「情報収集」「お店の選定・確認」「お土産選定」「接待プラン」である。
 例えば、接待相手についての「情報収集」の量で接待の成功率がかなり上がる。だからといって尋問のように聞くのはスマートではないし、煙たがられるだろう。日ごろの打ち合わせ前などの軽い雑談で、自然に情報を引き出すことが望ましい。また、接待相手の秘書や部下を味方につけるという方法もある。
 情報の中身は、どのような些細なことでも構わない。だが相手の会社と自社、それに競合会社との関係情報は、頭に入れておく必要がある。会話の中でポロッと相手と仲の悪い競合会社の話をしてしまい、逆鱗に触れていた営業マンを幾度か見かけたことがある。このように触れてはいけない情報も確認しておく必要がある。
 また会食接待であれば、相手の好き嫌いやアレルギー、行動範囲や家庭環境などはある程度把握しておこう。趣味なども知っておくと、会話がしやすくなる。
 次に「お店の選定・確認」であるが、できるビジネスパーソンはお店を徹底的に精査する。
 多くのビジネスパーソンは情報サイトなどで近くの歓楽街にあるお店を探し、個室の有無と値段しか確認せず、予約の電話を入れる。そして当日になって部屋が狭いとか、料理が想定と違うということになるのである。できるビジネスパーソンは、相手の情報から適切なお店を精査し、実際に事前訪問をして席の広さや配置の確認を行い、中には当日のメニューまで試食する人もいる。
 このように準備の二つだけでもかなりの労力がかかることが分かる。できるビジネスパーソンはこの「事前準備」に抜かりがなく、時間をかける。そして最後の「去り際とお礼」で印象を残すのである。

接待成功が導くもの

 接待が成功したか否かは、相手から社交辞令ではなくまた行きたいと言われたときや、ビジネスの話をしたいという具体的な意思表示があったときに分かるだろう。
 接待は自分のことを知ってもらい、心を開いていただいて良好な関係を構築する、または関係を持続するために行うものである。「心を開いていただく」ために「もてなす」のであって、「媚びを売る」ためや「自分が良い思い」をするためではない。
 相手と良い関係を築くことで、さまざまな情報を入手できる可能性やビジネスチャンスが生まれる。
 ぜひ接待マナーを磨いて、多くのチャンスをつかんでいただきたい。

下のボタンからPoint of viewバックナンバー一覧がご覧いただけます

//


src=