ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 5月8日、就職ナビ『キャリタス就活』を運営する株式会社ディスコは、2021年卒学生の5月1日時点での内定率が50.2%となったことを発表しました。4月1日時点(34.7%)からは15.5ポイント上昇したものの、前年同月(51.1%)比では0.9ポイントの減少となりました。内定率が前年同月を下回るのは、就活ルールが現行の「3月1日 採用広報開始、6月1日 面接選考開始」となった2017年卒(2016年5月調査)以来、初めてとのことです。
 同社調査による今年4月1日時点の内定率は、前年同月(26.4%)から8.3ポイントも上昇していました。当初は、7月から開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの前に採用活動を終了させるべく、インターンシップ参加者を対象とした早期選考を実施するなど、前年以上にハイペースで採用活動が進んでいたことがうかがえます。ただ、4月に入って、緊急事態宣言の発令により、就職関連イベントの自粛はもちろんのこと、在宅勤務の推進により、対面での面接選考も実質的には停止状態となり、採用活動は大きくペースダウンせざるを得なくなりました。前年は4月1日時点から5月1日時点に向けて24.7ポイントも上昇したことを考えれば、15.5ポイントの上昇にとどまった今年4月の採用活動は、いかにブレーキがかかったかが分かります。対面での面接が制限されたことだけでなく、新型コロナウイルスによる自社の業績への影響度が計れない中で、採用計画の見直しのためにあえてスピードダウンした企業もあることでしょう。
 前述の内定率調査結果の発表と同じ5月8日には、ANAホールディングス傘下の全日本空輸(ANA)をはじめとするANAグループが、2021年度入社の新入社員採用を、一時中断することが発表されました。グループ37社合計で約3200人を募集していましたが、パイロットと障がい者の採用を除き、グローバルスタッフ職(旧総合職)や客室乗務員などのほとんどの職種が対象になります。長引く新型コロナウイルスの感染拡大により航空需要が激減する中、今後の事業計画の策定が難しくなったことが理由とのことです。採用活動の再開時期は未定ながら、あくまでも一時中断であり、採用凍結までには至っていないようです。ただ、今後の展開次第では、採用数の大幅な抑制は避けられないでしょう。
 ネットを中心とした通販系やドラッグストア業界など、今回の新型コロナウイルスの渦中にありながらも業績を伸ばしている業界や企業も一部にはありますが、大半の企業では業績にマイナスの影響を与えることとなっています。今後も新卒採用計画数の下方修正や一時中断は避けられないでしょう。

依然として大手志向の学生が6割以上

 さて、ここのところ新型コロナウイルスが新卒採用に与えている影響について、企業の動向を見て来ましたので、ややタイミングがずれてしまった感がありますが、今回は3月8〜23日に「楽天みん就」の2021年卒業予定の会員学生を対象にして実施した「2021年卒学生の就職活動動向調査」の結果について紹介したいと思います。
 まずは就職意識から見ていきましょう。就職活動を行う学生に対して「就職を希望する企業規模」を聞いたところ、文系・理系ともに「できれば大手企業※」が最も多く、文系47%、理系54%と半数前後を占めています[図表1]。

 ※大手企業=1000人以上、中堅企業=300〜1000人未満、中小企業=300人未満と定義して質問

[図表1]就職を希望する企業規模

資料出所:HR総研「2021年卒学生の就職活動動向調査」(2020年3月)

 また、「絶対大手企業」は文系で14%、理系で16%となっており、これらを合計した「大手志向」の学生の割合は、文系で61%と6割を超え、理系では70%にも達しています。文系・理系ともに全体的な傾向は、前年同時期調査とほとんど変化はありません。依然として大手志向の学生が多くを占めていることが分かります。
 一方で、「企業規模は問わない」とする割合は文系で24%、理系で15%となっており、文系のほうが企業規模へのこだわりが少ない学生が多いことがうかがえます。

「仕事の魅力」で重視するのは「仕事が面白そう」かどうか

 学生が就職を志望する企業として重視する項目を「仕事」「会社」「社会的責任」「雇用」「採用活動」の五つのカテゴリーに分けて聞いてみました。
 まず、「仕事の魅力」については、文系・理系ともに「仕事が面白そう」を最も重視する学生の割合が高くなっており、文系で46%、理系で37%となっています[図表2]。やはり、まずは「面白そう」と関心を持つ仕事に就きたいと思うのは当然でしょう。

[図表2]重視する「仕事の魅力」

 これに次いで文系では「スキルが身につく」が20%、「希望する職種につける」が19%と同程度の割合で並んでいるのに対して、理系では、「希望する職種につける」が29%と3割であり、続いて「スキルが身につく」が22%となっています。理系学生は、大学で専門的な知識やスキルを習得してきているため、これらを生かせるような職種を希望する学生が多いと予測され、文系より「希望する職種につける」ことへのこだわりが強い傾向があるのでしょう。
 文系では、前年同時期調査と各項目の割合にほとんど変化が見られませんが、理系では、「仕事が面白そう」が前年42%から今回37%へと5ポイント減少し、代わりに「希望する職種につける」が前年25%から今回29%へ、「スキルが身につく」も前年17%から22%へと、それぞれ4〜5ポイントも上昇しています。近年の職種別採用の流れがこの結果に影響しているのかもしれません。

「会社の魅力」で重視するのは「安定感を持ちつつも成長し続けていること」

 次に、「会社の魅力」については、文系・理系ともに「安定している」がトップとなり文系で42%、理系で31%となっています[図表3]。社会の変動が激しい世の中であるからこそ、就職する会社に対して、何よりも自分の将来を託せる安定感を求める学生が多いということでしょう。

[図表3]重視する「会社の魅力」

 これに次いで多いのは、文系では「成長性が高い」が27%、「経営者・ビジョンに共感」が21%となり、理系では「技術力がある」が29%、「成長性が高い」が23%となっており、文系と理系で「会社の魅力」として優先される項目が異なることがうかがえます。ただし、文系・理系いずれにおいても「安定感」と「成長性」は3位までに挙がっていることから、企業に対して「安定感を持ちつつも成長し続けていること」が学生から求められていることだと分かります。
 前年同時期調査と比較すると、文系・理系ともに「経営者・ビジョンに共感」が大きくポイントを落としていることが分かります。特に文系では6ポイントも減少しています。それに代わって伸びているのが、文系では「安定している」(前年38%から今回42%)、理系では「技術力がある」(前年20%から今回29%)で、特に理系の「技術力がある」は9ポイントも上昇したことで、トップの「安定している」との差はわずか2ポイントにまで迫ってきています。次回の調査では逆転もあり得るかもしれませんね。

「社会的責任の魅力」で重視するのは「事業自体が社会貢献」

 「社会的責任の魅力」として重視される項目については、文系・理系ともに「事業自体が社会貢献」が最も多く、文系40%、理系でも41%となっています[図表4]。世界全体でSDGsへの取り組みが進む中で、企業としてもSDGsへの取り組みを対外的にPRする場面が増え、学生も、自身が就職する企業による事業としての社会貢献について、意識する機会が増加しているのではないでしょうか。

[図表4]重視する「社会的責任の魅力」

 また、「事業自体が社会貢献」に次いで多い「女性活用の姿勢が強い」については、文系のほうが理系より3ポイント高く24%となっていますが、この要因として、理系より文系の方が女子の回答者比率が高いことがあるのではと推測されます。前年同時期調査と各項目の割合に大きな変化は見られません。理系では、「女性活用の姿勢が強い」が前年17%から今回21%へと4ポイントの上昇を見せていますが、こちらも理系女子の回答者比率の増加が影響している可能性が高そうです。

「雇用の魅力」で重視するのは「社風・居心地が良い」

 続いて「雇用の魅力」については、文系と理系で傾向がやや異なっています[図表5]。文系では、「福利厚生がしっかりしている」が最多で38%と、前年の34%からさらに4ポイント上昇し、次いで「社風・居心地が良い」が37%で肉薄しています。一方、理系では「社風・居心地が良い」が最多で35%、次いで前年トップだった「福利厚生がしっかりしている」が前年の36%から7ポイントも落として29%となっています。

[図表5]重視する「雇用の魅力」

 文系より理系学生のほうが「社風・居心地が良い」を重視する要因としては、職種の特徴としてチームで製品開発をするなど、同僚とのチームワークの良さが必要となる業務を想定されてのことではないかと推測されます。なお、理系では、「福利厚生がしっかりしている」が前年から7ポイント減少した代わりに、「教育研修に熱心」は前年7%から今回12%へと5ポイントの上昇を見せています。

「採用活動の魅力」で重視するのは「一般社員と接して好感が持てた」か

 最後の「採用活動の魅力」では、文系・理系ともに「一般社員と接して好感が持てた」が最も多く、文系では35%(前年36%)、理系では前年の35%から10ポイントも上昇して45%にも及んでいます[図表6]。

[図表6]重視する「採用活動の魅力」

 次いで、「採用担当者と接して好感が持てた」が文系で33%(同30%)、理系で25%(同30%)となっています。これらから、学生は、採用担当者より実際に一緒に仕事をすることになるであろう「一般社員への好感」を重視しており、企業は、採用担当者だけでなく一般社員に対して、学生との接し方について研修等を実施することで、学生に対する企業全体のイメージアップにつながることがうかがえます。
 なお。理系では「セミナー・説明会での説明が詳細でわかりやすかった」も前年18%から今回13%へと5ポイントの減少となっています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、就職ナビや大学キャリアセンター等が主催する合同企業説明会の多くが中止になったほか、個別企業の会社説明会やセミナーも対面型からオンライン型へと変更になったことも要因の一つになっていると推測されます。

最も重視する企業の魅力は「仕事の魅力」で半数近く

 ここまで、各カテゴリーの魅力について重視する項目を聞いてきましたが、これらをまとめて、「最も重視する企業の魅力」について聞いてみたところ、文系・理系ともに「仕事の魅力」がトップで、文系42%・理系48%といずれも4割以上となっています[図表7]。次いで「会社の魅力」が文系34%・理系29%と3割前後となり、「仕事の魅力」と「会社の魅力」で8割近くを占めていることが分かります。

[図表7]最も重視する企業の魅力

 前述のとおり、「仕事の魅力」としては「仕事が面白いこと」が特に重要であり、「会社の魅力」としては「安定して成長性が見込めること」が特に重要で、理系学生においては「技術力」も重視されているという結果が出ています。したがって、今後の採用活動で学生に自社をアピールする際には、これらのことを特に意識してアピールすることで、学生の心をつかみやすくなりそうです。
 一方、「社会的責任の魅力」と「採用活動の魅力」は、文系・理系ともに回答率は1ケタにとどまります。

就職活動でアピールしたい能力は「チームで働く力」と「適応力」

 「就職活動で企業に対してアピールしたい自分の能力」を聞いたところ、文系では「チームで働く力」が55%で最多となり、次いで「適応力」が46%となっています[図表8]。

[図表8]就職活動でアピールしたい能力(複数回答)

 理系では「適応力」が49%で最も多く、次いで「チームで働く力」が僅差の48%、「論理的思考力」が42%と文系より突出してポイントが高くなっています。その他、「目標達成指向」の43%、「基礎的な学力」の31%、「専門知識」の28%も文系よりも比較的高い傾向があります。インターンシップから採用選考につなげたい学生の心理としては、短時間で終わってしまう面接選考の前に、ある程度の実施期間があるインターンシップに参加し、これらの能力をアピールしたいという意図も感じられます。

働き方改革の取り組み状況が「気になる派」は9割近く

 続いて「働き方改革への取り組み状況への意識」について見てみると、文系では「非常に気になる」が35%、「やや気になる」が53%で、これらを合計した「気になる派」は88%と9割近くを占めています[図表9]。

[図表9]働き方改革の取り組み状況への意識

 理系では「非常に気になる」が48%で文系より13ポイントも高く、「やや気になる」が40%で、これらを合計した「気になる派」は文系と同じく88%とやはり9割近くを占めています。働き方改革に関する法整備が進む中、学生の「働き方改革の取り組み状況への意識」も一層高まっており、企業は、より真剣に働き方改革に取り組んでいく必要があるとともに、働き方改革への取り組みを積極的に学生に発信していくべきだと思います。中には、近年の働き方改革のムーブメント以前から取り組みを進めており、現在進行形ではないという企業もあると思われますが、そうであれば、その事実はよりアピールすべきポイントだと言えます。
 これまで働き方改革は、「働く時間」と「働く場所」にスポットが当たりがちでしたが、今後は従業員の「やりがい」や「エンゲージメント」の観点から考えられた施策がより求められてきます。新卒採用だけでなく、キャリア採用からアルバイト・パート採用にいたるまで、あらゆる採用シーンに深く密接した重要課題の一つとして考えるべきでしょう。

社員の働き方への関心も9割以上

 働き方改革とは関係なく、「社員の働き方への関心」について聞いてみたところ、文系・理系ともに「非常に関心がある」が圧倒的に多く、文系で66%、理系で67%と7割近くを占め、これと「やや関心がある」とを合計した「関心がある派」の割合は、文系・理系ともに9割以上を占めています[図表10]。

[図表10]社員の働き方への関心度

 消費者として接する機会のある流通業や外食業、サービス業などを除き、学生は社会人の働き方を目の当たりにする機会は少なく、想像するしかない状況において、今後自身が就職した場合、どのような働き方になるのかをイメージするためにも、社員がどのような働き方をしているのかを知っておきたいと考えるのは当然のことでしょう。リアルな会社説明会が実施できない現状では、採用ホームページやオウンドメディアを有効活用して、できるだけ多くの社員の働き方を紹介する記事や動画などのコンテンツを収録するようにするとよいでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大の中、「主催者側による中止を望む」学生が半数以上

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、合同企業説明会や企業個別のセミナーの中止が頻発するなど、今年の就職活動生は思うように就職活動ができない環境下に置かれてしまっていますが、この状況について、就職活動中の学生はどのように捉えているのでしょうか。
 「セミナー中止か予定通りの実施か」に対する考え方としては、文系・理系ともに「感染リスクを考えれば中止すべきだ」が最も多く、文系で51%、理系で58%と5割以上となっています[図表11]。

[図表11]就職イベント中止への意識

 やはり、健康や命を第一優先した対応を求める学生が多く、主催者側で中止を決定してもらうことで、学生もリスクを冒して参加する必要もなくなり、安心して安全な行動を取れるようになります。『リクナビ』を運営するリクルートキャリアが、3月に全国で展開予定だった合同企業説明会をすべて中止することをいち早く発表し、マイナビをはじめとする多くの就職情報会社が同様に中止を発表する中、予定通り開催に踏み切った会社もあったようです。
 2月に開催された就職イベントでは、出展企業や参加学生に対してマスク着用の呼びかけもなく、参加した学生からは自分だけマスクを着用することがはばかられ、着用することなく最後まで参加したという声もありました。個別企業の会社説明会にしても同様です。このような非常事態発生時の企業による対応も、その企業への学生の志望度や信頼を左右する重要なキッカケになるのではないでしょうか。

少なくとも1社以上のWEB説明会を視聴した学生は8割以上

 新型コロナウイルス対策として、企業説明会やセミナーをWEB方式に切り替える企業が続出しましたが、3月時点において学生は、そのようなWEB説明会をどれだけ視聴したのでしょうか。
 「現時点でのWEB説明会を視聴した企業数」については、文系・理系ともに「4〜5社」がトップで24%となりました[図表12]。少なくとも「1社以上」とする割合は文系で86%、理系で83%となっており、8割以上の学生がWEB説明会を視聴した経験を持っていることが分かります。『マイナビ』『リクナビ』等が主催する大型の合同企業説明会に出展予定だった大手企業が、急きょWEB説明会に切り替えた影響も大きいと思われます。

[図表12]現段階でのWEB説明会を視聴した企業数

 幸いにも、普段からスマートフォンやタブレット、PC等を使用してWEBと切っても切り離せない生活をしている学生にとっては、WEB説明会への参加に戸惑うことも少ないことが推測されますが、WEBリテラシーが高くない学生にとっては戸惑いもあったのではないかと考えられます。
 逆に、企業側の戸惑いのほうが大きかったかもしれません。もともとWEB説明会を導入していた企業の割合はまだまだ少数派でしたし、話す内容はリアルな説明会とほとんど同じでも、目の前の学生の反応を見ながら話をするのと、何の反応も示さないWEBカメラを相手に話をするのでは、まるで勝手が違います。人事担当者にはまた一つ新たな課題ができたようです。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/
ジンジュール