「わたしのステージみたいになってたんでね……。美川さんに申し訳ないっていう気持ちもある」

2017年12月、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の「芸人が今までで一番スベった瞬間、逆に面白い説 第2弾」というコーナーでそう語ったのはオードリーの春日俊彰(41)だ。

芸人がこれまでいちばん“スベった瞬間”を振り返るこの企画。春日が挙げたのは2009年に出演した「第60回 NHK紅白歌合戦」だった。前年に「M-1グランプリ」決勝に進出した勢いそのままに、2009年を飛躍の年としたオードリー。紅白への出場も果たしたが、ここで待っていたのが地獄だった。

はるな愛(48)、IKKO(58)とともに“モモ組”を結成し、美川憲一(76)のサポート役を務めた春日。美川が歌うのは「さそり座の女2009 〜インド風バージョン〜」だ。インド風の軽快な音楽と民族衣装を着た数十人ダンサーたちの舞踏、そして「さそり座の女」の暗い歌詞と美川の絡みつくような歌声というミスマッチ。早くも“スベっている”ような気がしなくもないが、バックスクリーンにインドの肖像画風の春日の顔が映し出された瞬間からが本番だった。

「みなさん、今年のモモ組、ほんものの春日ですよ」

そんなセリフとともにご本人が登場。白色のとんがり靴に、銀色に輝くマント、金色のズボン、ベストだけはいつものピンク色と、どこの国のものかわからない衣装に身を包んだ春日が大暴れする。

はるな愛とIKKOが隣で踊り狂うなか、マイペースで歌う美川。春日は舞台上を歩き回りながら、「ヘッ!」「鬼瓦!」「トゥース!」と、自分の持ちネタを唐突に披露する。バックスクリーン上では、赤色に彩色された春日の顔のまわりを、青色や黄色の春日の顔がくるくる回るという“サイケ”な謎映像が流れている。そして歌の後は、こんなやり取りで締めくくられた。

美川「ねぇ、春日、鬼瓦ってなに?」 春日「春日のスベり知らずの超おもしろギャグですよ」 はるな愛とIKKO「おだまり〜!」 4人でそろって「おっ…鬼瓦」

春日の鬼瓦は泣いているようにも見えた。ちなみに、美川は19年連続で紅白に出場中だったが、この年を最後に出場していない。

「昔から紅白が終わるたびに、『あの演出は必要だったのか』という声があがることはありましたが、そうした声はここ10年くらいで大きくなりましたね。特に、その年の時事ネタを取り入れた演出にはそういう声が出ることが多いと思います」

そう語るのはベテラン放送作家だ。春日の例のように、その年ブレイクした“ヒト、モノ、コト”を演出に取り入れるのは紅白の常とう手段ではあるが、近年、それに対して“スベった”と言われることが多いのが事実。昨年の放送終了後はこんなツイートが。

《絶妙に紅白面白くない 歌だけ歌ってくれ》 《紅白、つまらない企画挟まないで、ガチで歌での合戦ばっかやらんかな》

近年で特にそういった声が特に多かったのは2016年の『第67回NHK紅白歌合戦』だ。

「歌の合間にタモリさん(75)とマツコ・デラックスさん(48)が紅白のバックステージを歩き回るという寸劇が挟まれました。『ブラタモリ』と、『深夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)から着想したのでしょうが、視聴者に何の説明もなく“グダグダだった”という感想が多かった。さらに、映画『シン・ゴジラ』のヒットを受けて、NHKにゴジラが来襲し、それを歌で倒すという演出も。時の人となっていたピコ太郎がPPAPの“第九バージョン”でゴジラと対峙し、最後はX JAPANが“紅”でとどめを刺しました」(前出の放送作家)

これにはタレントの伊集院光(53)がラジオで「スベってた」とバッサリ。ピコ太郎と親交の厚い爆笑問題の田中裕二(55)はラジオで「紅白の笑いって、ほぼスベるからね。100%と言っていい」と擁護した。

芸人からも不評な紅白の演出だが、「仕方がない部分もある」と語るのは前出の放送作家だ。

「音楽のジャンルも細分化していって、昔のように国民すべてが知っているような歌は存在しない時代になりました。“国民的歌謡番組”というのは成り立たない時代になっているのです。それでも紅白はその役割を期待されていますから、少しでも多くの人を飽きさせないために、さまざまな要素を入れざるを得ません。たとえば、天童よしみさん(66)が歌っているときも、武田真治さん(48)に“筋肉体操”をしてもらったり、サックスを吹いてもらったりと、演歌ファン以外の興味をひくような演出を入れる必要がある。歌と歌の間に挟まれる“寸劇”も同じ。要は少しでも視聴者の裾野を広げようという苦肉の策なんです」

時事的なネタや人気者を入れることで、そのジャンルの音楽に興味がない視聴者もひきつける効果を狙っているのだという。

「だが、その演出が無理矢理入れているとか、必然性がないものに見えたとき、“スベった”という印象を持たれてしまうことがある。だが、これも少しでも多くの視聴者を楽しませようというスタッフのサービス精神の結果ですから、温かく見守ってあげてもいいんではないでしょうか」

今年の紅白ははたして!?