“芸能人YouTuber”が急激に増加した2020年の芸能界。YouTube専門メディア「ユーチュラ」によれば、2020年に開設された「芸能人」タグのついたチャンネルは200以上。大物タレントや俳優、アイドルによるYouTube参入も話題になった。

テレビと違って、再生数数増加が収益につながるというのは、本人にとっても事務所にとっても魅力的なメディア。ファンにとっても、テレビとは違った自然体の姿を見られる最高のコンテンツといえる。成功例として挙げられるのが本田翼(28)だ。撮影も編集も企画も、ほぼ自分でこなし、わずか14本の動画で、約6200万回再生を叩き出している。

自分らしさを爆発させ、お金も稼げる――。まるで夢のようなメディアだが……。

「2021年は、芸能人のYouTubeチャンネルは減っていくことが予想されます」

そう語るのは、ある映像制作会社スタッフ。そこには、再生するだけでは見えない制作スタッフの苦労、実際の収益など。誰もが本田翼のようにはいかない、裏側の事情があった。

芸能人Youtuberは、主に2つのパターンに分かれているという。

「自発的にこういうのやりたいっていう意志がある人と、事務所や周りに無理矢理やらされてる人がいるんです。前者のパターンだと、基本的に本人の意見を事務所が吸い上げて、それをYouTubeの制作会社に依頼という流れ。後者だと、放送作家がついて、企画から考えることになります」(前出・映像制作会社スタッフ、以下同)

前者のほうが、本人にアイディアがあるぶんスタッフの苦労は少ないように感じるが……。

「実は本人に意志があるほうが大変なんです。YouTube制作会社は、再生数に応じて報酬が支払われます。なのでこちらも再生数が伸びやすい、『モーニングルーティン』などの企画をやってほしいとリクエストするんですけど、“YouTubeっぽいもの”をやりたがらない人も多いんです」

タレント本人が、別のタレントやYouTuberとコラボしたい、と言い出す場合もある。

「そうなるとコラボ相手にオファーして、スケジュールを調整し、企画のすり合わせをして……と1つの動画に対しての工数が増えてしまう。しかも、労力の割に再生数が伸びないことも多い。本人の意思もあって、さらに事務所の意向もあるパターンがいちばん大変。決まったことがまたひっくり返る……なんてこともざらですね(苦笑)」

テレビとの決定的な違いとして、制作スタッフを悩ませているのは、事務所や本人のチェックが入ることだ。基本的にテレビのバラエティ番組などは、収録後の確認、修正は行われない。それに比べYouTubeチャンネルは、本人、事務所スタッフなどチェックが多いのだ。

「特に大変と言われているのが、アイドルの肌修正。事務所から修正指示が入りますが、テレビCMのようにきれいに修正するのは予算的にも無理。それでも要求されるので、たとえばニキビやアザが顔の右側にあれば顔の左側が映ったカットのみを使います。あとは、明るさ修正で全体を白く飛ばすしかない。顔に合わせて白く飛ばすと、一緒に映っている料理などはほとんど見えないんですが(笑)、それでも事務所が強行させるパターンもあります」

ほかにも、本人の意思を尊重した結果、事務所から修正が入り、その指示に従ったら今度は本人が気に食わず再度修正することになるケースも。さらに最終チェックで事務所の社長がNGを出してくる場合もあるという。YouTubeに慣れていない事務所のチェックが入ることによって、制作側には大きな手間がかかっている。

YouTuberと違い、特に細かくなりがちな芸能事務所とのやりとり。しかし、そうした工数がかかるわりに、あまり儲からないこともわかってきた。

「とにかく、実際にお金になるのは登録者数ではなくて再生数なんです。たとえば登録者数が100万を超えていても、1つの動画で20万再生くらいだと稼げてないってことになる。Googleのアルゴリズム上でも登録者数だけ多くて、再生数が少ない人たちって“さくら”みたいに見られて、評価を下げられてしまうんですよね」

すなわち、登録者数ぶんの再生数を突破している人は順調といえる。芸能人がYouTubeを始めると興味本位で1度は登録するが、結局YouTubeウケする動画が作れず、どんどん下がっていく傾向にあるという。

「意外と稼げないよねっていうのは、芸能人側も、制作側も感じています。そこそこ市場も飽和してきていますし、既存のチャンネルも今後は絞られてくると思いますね」

テレビもYouTubeも……そううまくはいかないようだ。