久本雅美(62)、柴田理恵(62)などが所属するWAHAHA本舗の代表取締役社長で、演出家でもある喰始氏(たべ はじめ、73)。昨年5月に開催予定だった喰氏が構成・演出を務めるWAHAHA本舗の全体公演「王と花魁」は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期になっていた。その公演が日程を改めて、2021年10月28日から東京公演を皮切りに全国ツアーが決定。そこでインタビューマン山下が喰氏に話を聞いた。

――公演はまだ半年先とはいえコロナ禍での開催になると思われます。その辺りは構成・演出に影響はありますか?

影響というかコロナを逆手にとりたいとは思いますね。例えば梅垣(義明、61)の場合は鼻から豆を客席に向けて飛ばしたり、いつもお客さんを巻き込む芸なんです。でもさすがに今の時期はそれができないので、逆に梅垣がひどい目に合うと言うふうな方向性に切り替えたり、基本的にはどんなこともプラスに取り込んじゃう考えです。

――コロナ禍だからこそできるネタを考えるということですね。

そうですね。これはやるか、やらないかは別にして例えば梅垣が全裸にたくさんのマスクで体中を覆いつくしてミイラ男みたいに出てくるとか。そういった案を稽古場で1度やってみて面白ければやるし、だめならボツと言う感じで作っていくんです。



■「ブリーフじゃなくて海パンにしなさい」と猫ひろしに

――今となっては梅垣さんの代表作、歌いながら鼻から豆を飛ばす芸は喰さんの助言から生まれたと梅垣さんからお聞きしました。猫ひろしさん(43)にもターニングポイントとなる喰さんの助言があったそうですが。

僕のところに猫ひろしがネタ見せに来た時はWAHAHA本舗所属じゃなくてまだ地下芸人だったんですよ。猫ひろしはいい所と悪い所、半分半分だったんですが、僕は面白いと思ったからライブに出したんです。それで彼がWAHAHA本舗に入りたいと言うから入れるのに条件を出しました。「ネタはそのままでいいけどアングラな地下芸人という世界に行って、それを喜んで武器にしてはいけない。地下と言って開き直るのはやめなさい」と。

――地下の猫ひろしさんを喰さんが地上に上げたんですね。

その当時はブリーフでネタをやってたんですよ。それも止めさせて「海水パンツに替えなさい」と言いました。

――“地上”では見た目からもっとポップにしなさいということですね。喰さんはWAHAHA本舗のメンバー以外の芸人さんにも多くの助言をしているとお聞きします。ぺこぱの松陰寺太勇さん(37)の衣装なんかもそうなんですよね。

当時、松陰寺君はスーツを着てビジュアル系バンドのキャラのネタをやってたんです。僕はそれだったらキャラやネタはそのままでいいからビジュアル系がやらない着物の方がいいんじゃないかと言いました。

――今はスーツに戻りましたがメディアに出始めの頃の松陰寺さんは深夜番組に着物で出演していました。

その後に着物を止めて売れたから俺のアドバイスがダメみたいになってるけど、その当時はある程度ウケて仕事が入ったらしいですよ(笑)。

――存じています(笑)。松陰寺さん本人も「そこからお客さんのウケがどんどん良くなった」と感謝していました。ナイツさんにも助言したそうですが。

ナイツはネタ見せに来たんだけど、その時にネタを飛ばしちゃったんですよ。でもそこからやったアドリブの方が面白かったの。だから「それができるんだったら別に台本通りやらなくていいよ。漫才は台本が無いように見えるのが面白いわけだから。ネタが飛んだら飛んだでやって行くのがライブのおもしろさだし、台本なんか気にせずにぶち壊せばいいんだよ」って。

――塙宣之さん(42)はその助言で1つ上の段階に行けたとラジオでおっしゃってました。



■「髭男爵なんだからひぐち君は執事の格好すべきでしょ」

――髭男爵さんにも助言したそうですね。

髭男爵がネタ見せに来た時は山田(ルイ53世)君(45)はすでに今の形だったんだけど、ひぐち君は普通のスーツだったの。それで「山田君を男爵と呼ぶんだったらひぐち君(47)は執事の格好になるべきでしょ。立場をはっきり見せないとダメですよ」と。そしたら変わったの。

――カンニング竹山さん(49)もネタ見せに来たそうですが。

コンビ時代に来ましたね。その時に竹山君のキレ芸に「もっと毒づいて客を敵に回すぐらい言った方がいいよ。それでただ怒るんじゃなくて本質をついたような批判をしないとつまんないよ」って。

――皆さん喰さんの助言を聞いて活躍されてますね。

僕のスタンスは「余計なお世話なことを言うよ。聞きたい? 聞きたいなら言うよ」という感じです。それで単純に思いついたことを言ってるだけで、それをやるかやらないかは本人次第。

――最後に喰さんから読者の皆さんにも何か助言をいただけますか?

コロナもそうですが今はどうなるかわからないという時代です。ですから来年の我々の公演もあるかどうかわからないんです。僕が一番思うのはWAHAHA本舗をまだ見たことがない人に公演を見に来てもらいたい。いつでも見れると皆さん思わないでください。劇団はいつ無くなるかわかりませんよ。だから無くなる前に1回は見に来てください。「いつまでも、あると思うなWAHAHA本舗」(笑)。

【取材・文】 インタビューマン山下 1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退。現在はインタビュアー・ライター・お笑いジャーナリスト