今年度話題No.1ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京系)Blu-ray BOX発売を記念して、原作者の豊田悠先生に「チェリまほ」について改めてお話を聞きました!

――「チェリまほ」はどのようなきっかけで、生まれた作品なのでしょうか。その経緯をお教えください。

「8年くらい前、ふと『人に触れたら心の声が読めるという有利な能力を恋愛経験がない人が得たら、より心の声に振り回されて使いこなせないだろうな』と思い立ちました。これをラブコメでやったら面白いだろうなと思い、『30歳まで童貞だと魔法使いになれる』という都市伝説を組み合わせて、『チェリまほ』の土台が生まれました。最初は柘植と湊のような二人を想定していたのですが、2018年1月、ちょうど当時の青年誌での連載が休みで時間があったのでtwitterに漫画を投稿しようとした時に、逆にして主人公が誰かに惚れられている事に気付いたほうが意外性があって面白いなと思い、今の形になりました」

――「チェリまほ」を描き進めるうえで、現実でモデルになった人や参考にしたエピソードがあれば、お教えください。

「『チェリまほ』は話ありきで考えたので、特定のモデルになった人はいないのですが、柘植は友人の男性作家の話し方を少し参考にしています。実写になったら、浅香さんの喋り方や動きが実際に彼に似ていて『すごい!』と思いました」

――「チェリまほ」を描き進めるうえで、豊田先生が悩んでいることはどのようなことでしょうか。

「『チェリまほ』はtwitterでの連載なので、4Pずつ続きが気になるように話を続けながら、1冊で読んだ時にも楽しめるように構成することに一番頭を使っています」

――「チェリまほ」全体に関して、制作秘話などありましたらお教えください。

「タイトルが長いので愛称を考えようとなった時に『チェリまほ』か『まほチェリ』かどちらがいいかで悩み、twitterでアンケートを取って決めました。こうした点でも『チェリまほ』は読者の皆さんに育ててもらった漫画だと実感します。まさかネットでトレンド入りする単語になるとは当時は思いもしませんでした(笑)」



■「第1話のリアル感に本当に驚きました」

――ドラマ化の話を聞いて、豊田先生の率直な感想をお教えください。

「昔からドラマが好きだったので、自分の作品が実写化する事はとても嬉しかったのですが、まさかこの作品でなんて夢にも思わなかったです。最初に知らされた時には担当編集さんがサプライズをしてくださったのですが、事態がまったく飲み込めなくてキョトンとしていました(笑)。正直BLの実写ドラマ化自体、前例が少ないこともあり、楽しみでもあり不安でもありましたが、スタッフもキャストの皆さんも思慮深い方ばかりで、本当に丁寧に各方面に気を配りながら作ってくださったなと思います」

――ドラマになった「チェリまほ」で、赤楚衛二さんや町田啓太さんを中心とした出演者の演技はいかがでしたでしょうか。

「初めて第1話を見たとき、漫画そのものというよりも、キャラクターの魂を持つ人間が現実社会にいたらこうだろうなと思わざるを得ないリアル感に本当に驚きました。

安達を演じる赤楚さんは自分に自信がない猫背の青年が、初めて人に好意を寄せられて戸惑いながらも、回を追うごとに変わっていく様子をとても繊細に演じてくださいました。黒沢と恋をしていく中で変わっていく安達の、言葉で説明できない空気のようなものや愛らしさをお芝居で表現してくださったことに、本当に感動しました。何気ない仕草一つとっても、第1話と黒沢と付き合った以降の第8話では全然違いますし、どちらも愛さずにはいられない魅力がありました。安達は恐怖を感じながらも一歩踏み出すシーンがとても多いのですが、それを大袈裟ではなく応援せずにはいられないきらめきと初々しさを持って、毎回毎回違う表情を見せてくださいました。そんな魅力的な赤楚さん演じる安達だからこそ、見ている側も皆応援したくなるし、見守りたくなったのではないかなと思いました。

黒沢を演じる町田さんは以前別の作品で拝見していて、その時にコメディに振り切った時の思いきりのよさと、それでもブレない品の良さが素敵だなと思っていました。そんな期待を100倍くらい超えたお芝居に、毎回オンエアを見るたびに戦慄していました。コミカルな部分だけでなく、実際に町田さんが演じられてより強く感じたのは、黒沢の人間らしい葛藤や切なさでした。安達を見つめる愛情に満ちた目線や深く息を吐きだす体の動き、恋愛に苦しむ一人の男としての生々しさを全身で体現してくださって、何故こんなに黒沢を深く解釈出来るのか、作者ですが知りたいくらいでした。

草川さん演じる六角はチャラそうに見えて友情にあつく、古い体制に対してバッサリ切り捨てる格好良さ、人懐っこくてグイグイ来るのに全然憎めない可愛さを兼ねた後輩で、本当に素敵でした。スピンオフの六角編が面白すぎて、もっと六角の話を描いておけばよかったなと思ったくらいです。

ドラマのオリジナルキャラクターの豪快で憎めなくて父性溢れる浦部先輩も素敵でしたし、藤崎さんは原作と設定は違いますが、藤崎さんの存在で救われたという読者さんも沢山いて、佐藤玲さんに藤崎さんを演じていただけて本当に良かったなと思いました。

口は悪いけど夢にひたむきで少し小悪魔な湊も、普段の挙動不審な可愛さと、包容力のある格好良さが奇跡の両立をしていた柘植も大好きで、スピンオフをまだ見てない方がいらしたら、二人のその後を是非見て欲しいです」



■「ドラマを通じて、世界とつながれたことが魔法」

――ドラマはSNSを通じて、国内のみならず世界中から反響がありました。豊田先生へのエールや作品に関してのコメントはどのような声が多く、嬉しかった声はどのようなことでしたか?

「ドラマが日本だけでなく世界中で愛されているおかげで、私にも多様な言語でのコメントをいただく機会が増えました。どのコメントでも『チェリまほ』の物語を楽しんでいることが伝わってきて、うれしく思います。今は気軽に海外に行く事も出来なければ、人と触れ合うことも場合によっては躊躇する時代に、このようにドラマを通じて繋がれる事が魔法の様ですよね」

――全世界で「チェリまほ」がブレイクしているのはなぜだと思いますか。

「私は評論家ではないので、難しいことはわかりませんが、スタッフやキャストの皆さんが本当に丁寧にドラマを作ってくださったおかげで、すベての登場人物がまるで現実社会のどこかで一生懸命生きているように感じられるからこそ、観ている方も安達と黒沢の恋を含め、ドラマを応援して下さってここまで盛り上がったのではないかなと思います」

――ドラマでは安達と黒沢が付き合い始めた初期のストーリーでしたが、原作ではその後のストーリーも続いています。今後、どのような展開になりそうでしょうか。

「安達は黒沢と付き合った事で変化していきますが、同時に黒沢も心の中を全部知った上で受け入れられたことで、今まで完璧でいなければと思っていた彼の鎧がとけ、少しずつ変化していきます。魔法がなくなった後の二人が今後どのように生活していくのかを楽しみにしていただけたら嬉しいです」

――ドラマの続編があれば、ドラマにどのようなストーリーを入れ込んでほしいでしょうか。

「ドラマはドラマで綺麗に完結していますし、今後のことは何もわからないうえに、私に決められることは何もないのですが、最終回で閉じた豊川(文具会社)のエレベーターがもしまた開く事があれば素敵だなと思います」

【PROFILE】 豊田悠 '10年、デビュー作『野ばらの花嫁』(花とゆめCOMICS)が「第35回アテナ新人大賞」でデビュー優秀賞を獲得。Twitter投稿が話題となり連載化した『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(ガンガンpixiv)は「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2019」第1位となり累計145万部を突破。新刊7巻は通常版・特装版の2バージョンで4月22日に発売予定。

【INFORMATION】 『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』Blu-ray BOXは3月24日に発売。特典映像にはメイキングに加え、スピンオフも収録。ブックレットには豊田先生の特別編描き下ろしも。詳細は番組HPを。