昨年度話題No.1ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京系)Blu-ray BOX発売を記念して、本間かなみプロデューサーにドラマの舞台裏を聞きました。

――赤楚衛二さん、町田啓太さんの起用理由をそれぞれ教えてください。

「安達は“モサく”したい一方で、応援したくなる人物にしたいと考えていました。ですので、陰の空気を纏っても埋もれない愛らしさ、少年らしい無垢さを感じられる方が良いと思っていました。赤楚さんは元々、生っぽくて心の通いが見えるお芝居が魅力的だと感じていました。赤楚さんが安達を演じてくれたら“愛される安達”になると思い、オファーさせていただきました。

黒沢は、人間らしさやいじらしさを醸し出せて、コミカルシーンを真面目に演じる際に面白くなる方を想像して、町田さんにオファーさせていただきました。個人的な感覚ですが、黒沢の恋心を描く上でフォーカスを当てたかった『切なさ』や『ピュアさ』が映える方だと、感じたのも大きかったです」

――実際にお二人に会った第一印象は?

「赤楚さんはいい意味での普通っぽさに驚きました。自然体で正直で柔和。町田さんは凛々しくて芯のある印象でした。お二人ともタイプは違いますが纏う空気が似ていて、二人が初めて並んだ時わくわくしました」

――お二人の役者としての魅力、チャーミングなところはどのようなところでしょうか。

「赤楚さんは愛され力だと思います。芝居をしていても、演じる人の何かしらはこぼれ出ます。そこに、その人が演じる意味が宿ると思いますが、赤楚さんはそのこぼれ出るものに人を惹きつける魅力があると感じます。生っぽさや心の通いが見える芝居はテクニックで表現できるものではないと思うので、それができる貴重な方だと思います。

町田さんは起爆力だと思います。好青年感や爽やかさを胡散臭さや底なしの怖さ、コミカルに傾けることもできる。絶妙な匙加減のセンスを持ったレアな方です。役の角度次第でいくらでもイメージを裏切っていける、エンターテイナー性が高い魅力があると思います」



■「柘植の激励シーンに、現場で泣きそうに…」

――実際に関わってみて、赤楚さんと町田さんの意外な面、イメージと違ったところはありましたか?

「赤楚さんは天然と聞いていたので、ふわふわした方なのかなと思っていたのですが、とても実直な方でした。みんなが気づかないことに気がついたり、ふとした時の視野が広い人でした。何事にも構えないフラットさ、しなやかさは人としても役者さんとしてもすごいなと思いましたし、かっこよかったです。

町田さんは、勝手にクールなイメージがあったのですが、気さくな方でした。さりげなく、みんなを引っ張ってくれるお兄さん。芝居だけではなく、さまざまなことに対してアイディアをくださって、作品を届けることへ思いを持っている、愛のある方だと感じました」

――出演者もスタッフも同世代が多く、かなり綿密にディスカッションをしながら撮影を進めたと伺いました。どのようなシーンでどんな話し合いがあったのか、本間さんが印象的だったことを教えてください。

「第6話のタコパのシーンで、実際に演じてみたら安達の心情的に少し難しいモノローグの箇所がありました。赤楚さん、町田さん、草川さん、林監督含め、どういう流れになったら源泉となる安達も、それを向けられる黒沢も違和感がないのか話して、現場で少し流れを変えました。些細なことでもディスカッションする真摯さに、みんながみんな“これは自分の作品だ”って考えているような温かさを感じて、印象に残っています」

――赤楚さんと町田さん以外にも、魅力的なキャストが多数出演しています。柘植(浅香航大さん)、湊(ゆうたろうさん)、六角(草川拓弥さん)、藤崎さん(佐藤玲さん)について、それぞれ撮影時の演技はいかがでしたか。

「浅香さんは、想像を遥かに超えた新しい顔を見せていただき、すごく新鮮で面白かったし感動しました。柘植の台詞や行動は真っすぐだからこそ、生身の人間に変換したときに上滑りしたものになるか響くものになるか紙一重の所がありました。そこで、浅香さんが演じると説得力と響きが生まれる。第8話、湊を激励するシーンは現場で見ていて泣きそうになりましたし、走り方も柘植らしさ全開ですがそれ以外の何気ない部屋での動き一つとっても、ものすごく“柘植“の感じが出ていて、スタッフみんなで『すごい!』と沸きました。

ゆうたろうさんは、ツンデレな湊に小悪魔感を与えてくれました。湊の“ツン”の塩梅を監督と試行錯誤する際も、直向きに向き合ってくださっていました。Blu−rayには特別編集版として湊のダンスのフルバージョンを入れてあるので、ぜひ見ていただきたいです。

草川さんは愛嬌のある後輩ポジションが元々似合う印象がありますが、ふとした時に見せる表情にそれだけじゃないものを感じさせる魅力がありました。六角の中に点在しているギャップをとても自然に、一人の人間のものとして紡いでくださいました。

佐藤さんは『藤崎さんが実際に自分の身近で息づいているんじゃないか』と感じさせる魅力と存在感がありました。カメラの向こうとの境界線をなくせてしまえる人。些細なカット、表情、目線、佇まい一つ一つがどれも“そこに根付く人”そのものでした」



■「キャストの皆さんで買い物に…」

――この作品を制作するなかで、大変だったシーンや苦労したことは?

「心の声が聞こえるシーンは、この作品ならではの大変な所だったと思います。テストでは心の声を実際に声に出して役者同士のタイミング、カメラのタイミングを擦り合わせますが、本番は無言。みんな想像し合いながら撮影していくしかありません。それでも、役者同士のリアクションや表情の変化のタイミングがズレたことはほぼなくて、いつも皆さんすごいなと思っていました」

――撮影現場での隠れたエピソードがあれば、お教えください。

「撮影の休憩中、たまにスタッフへの差し入れを赤楚さんと町田さんが買ってきてくれたり、それ以外にもよくキャストの皆さんで、一緒に買い物に行ったりしていました。みんなとても仲が良くて、現場を和やかに明るく盛り上げてくださって感謝しています」

――SNSを通じて、国内のみならず世界中から反響がありました。どのような声が多く、嬉しかった声はどのようなことでしたか?

「『赤楚さんがかわいい!』『町田さんがかっこいい』という声が圧倒的に多かったのですが、それと同じくらい放送が終わると『来週まで待てない!』『一週間が一年に感じる』など、次回を楽しみにしてくださる声が多かったですね。誰かの一日の楽しみになったらいいなと思って作っていたので、とても嬉しかったです。

――全世界で「チェリまほ」がブレイクしたのはなぜだと思いますか。

「なぜだろうとは私もずっと思っているのですが……。豊田先生の原作とキャストの皆さんの圧倒的な魅力、スタッフの皆さんのおかげ。それと、世界各国共通して人と物理的に距離を取り、人の温度への飢餓感みたいなものがある今、“触れる”“心の声が聞こえる”という距離のない温度のある交わりが響く所があったのかなと思います」

――安達と黒沢が付き合い始めた後のストーリーが原作ではまだ続いています。続編の可能性は?

「続編について聞いていただけるような作品になったこと自体、うれしいことです。どうなるかはわかりませんが、また安達と黒沢、柘植と湊、豊川のみんなに会えたらいいなと思っています」

【PROFILE】 ’90年9月22日、群馬県生まれ。テレビ東京制作局ドラマ室所属。APとしてさまざまな作品に参加し、今作が初プロデュースとなる。