朝ドラ開始から60年、現在の3世代物語『カムカムエヴリバディ』と同じく現実でも3世代にわたる歴代ヒロインたちの今に迫った!

「結婚して5年たった’90年ごろに東京から伊豆に移住しました。これからは、住むなら自然の豊かなところがいいんじゃないと。私は生涯女優を続けたいので東京から通える距離がいいな、と思っていたら母が見つけてきたんです。標高500メートルの山頂で、目の前には富士山がどかーんと見えるんです。今では新幹線の本数も増えて、引っ越しは正解でしたね」

連続テレビ小説で初のカラー放送、橋田壽賀子初の脚本『あしたこそ』(’68年4月〜’69年4月)で香原摂子役を演じた藤田弓子(76)。現在は脚本家の夫・河野洋さん(82)と伊豆で暮らし、伊豆の国市付属劇団「いず夢」座長を務めている。

「主人は元気なうちに77歳で生前葬をしました。友達や仕事仲間など100人ほど集まっていただいて、本当に楽しかったですね。主人は80歳で運転免許も返上したので、今では私が運転手です(笑)」

『あしたこそ』では父親役の中村俊一さん(享年54)に、ドラマ期間中ずっと励まされていたという。

「収録から2カ月で亡くなる設定なのに、ずっと収録に来てくださって、1年半もご飯に連れて行っていただいて感謝しています。残念ながら’80年に亡くなられて……」

藤田は『マー姉ちゃん』(’79年)でヒロインの母親役も演じた。

「今度は私が中村さんの役目をやるんだって思えたんです。熊谷真実ちゃんや田中裕子ちゃんたちは素晴らしくて収録も本気でやっているから、後半になってくるとみんな表情が疲れてきてね。そこで私は『みんな、ディスコ行こうか?』って誘ってね。照明さんや衣装さんや大道具さんやスタッフもみんな発散して、翌日はみ〜んな目がキラキラ(笑)。実はこのときのメンバーとはいまだに交流が続いておりまして、毎年集まって会ってるんですよ」

“ホームドラマこそ、役者同士の付き合いが大事”だと笑った。



■日色ともゑは新潟で田植え&収穫「米作り25年」

日色ともゑ(80)は『旅路』(’67年4月〜’68年3月)で国鉄職員の妻・室伏有里を演じた。

「“ともゑ米”を作り始めてもう25年です。新潟の旧岩室村に私の田んぼがあって、コロナ前は毎年田植えに行っていました。原爆を伝える朗読劇を村でしたとき、今度は子供たちのために朗読会を、ギャラの代わりに『田んぼでどうでしょう』って。翌春、本当に『田んぼの支度ができたから田植えに来てください』って言われてびっくり(笑)」

現在は2月に公演の劇団民藝の舞台『レストラン「ドイツ亭」』の稽古中だ。かねてから「80歳で引退して“夫孝行”する」と公言していたが、元々は沢村貞子の言葉だった。

「2度目の朝ドラ出演作『おていちゃん』(’78年)で原作者の沢村さんと出会い、80歳の引退パーティのご挨拶で聞いて素敵だなと感じて。沢村さんから『あなたも80までやりなさいよ』と言われたので目標にしてきたんです。でもいざ80近くなったら孝行する夫が亡くなってしまったので、結局は劇団孝行しています(笑)」

いまだに地方に公演に行けば「旅路の日色さん」と声がかかる。

「50年たっても覚えてていただけるなんてうれしいですよね。父に『君にとって例外的な1年だ。毎年続くんじゃないよ』と諭されたことがありますが、劇団という戻る場所もあったおかげで、勘違いもせずやってこられました」

そう笑いながら稽古に向かった。