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ブ〜ン……。この季節になると、うっとうしいのが蚊。「私って刺されやすい……」と悩む人も多いだろう。そんな悩みを、いま1人の高校生が救おうとしている。

「妹が、蚊のアレルギーがあって、刺されると赤く腫れてしまうんです。なんとかできないかと、中学3年生のときに“実験”を始めました」

そう、目を細めて笑うのは、京都教育大学附属高校3年の田上大喜くん(17)。どんな実験をしているのか本誌記者がたずねると、田上くんの口から流れるような解説が。

「蚊は、メスだけが人の血を吸います。そのなかで、ヤブ蚊として一般的なヒトスジシマカを採集し、どんな匂いが好きなのか調べるため、妹の帽子や衣類など、いろんなものの匂いを嗅がせてみました。そしたら、靴下に蚊が特別な反応をみせたんです!」

妹の千笑さん(15)がはいた靴下を近づけてみると、蚊が何度も交尾を始めたという。いままでとは違う蚊の反応に、田上くんは大喜び――。でも、いったいどういうこと?

「つまり、蚊は妹の“足”に引かれて、血を吸いたくなるということがわかったんです。自然界では、蚊は一生に1度しか交尾をしないといわれています。妹の靴下に反応してメスが集まり、そこにオスが引き寄せられ、何度も交尾が行われた――それほど蚊を興奮させる“何か”が、靴下にはあったということです」

ここからヒントを得て、田上くんはさらに実験を続けた。

「ウチで足が最もにおうのは父で、妹の足は全くにおいません。それなのに、なぜか家族では妹ばかりが蚊に刺される。そこで、高校2年生のとき、妹や同級生の足の菌を採取し、培養してみました。すると、妹の足にある“常在菌”の種類が多いことが判明。メスの蚊は、足がにおう人ではなく、足の常在菌の種類を多く持つ人の血を吸いたくなることがわかりました」

この研究により田上くんは、筑波大学が世界的科学者を育てるために主催する、全国の小・中・高校生の理科コンクール「第11回『科学の芽』賞」を受賞した。将来、蚊に悩む必要がなくなる可能性もあると、世界中の科学者たちの関心を集めているという。そんな“蚊博士”田上くんが、蚊を寄せ付けない対策法も教えてくれた。

「妹の足首から下をアルコールで消毒したら、蚊に刺される数が、3分の1に減少しました。これは足の裏や指の間を石けんで洗うだけでも同じ効果があります。また、靴下を新品なものにはき替えるだけでも刺される数は激減しました。山椒や酢、アロマで使われるティーツリーオイルの匂いにも、蚊よけの効果が。蚊が苦手とする成分があるようです」

これだけでも大発見だが、田上くんの研究はまだまだ続いている。

「人の皮膚にすんでいる数ある常在菌のなかでも、蚊が好む菌を特定してみたいです。また、僕が実験しているヒトスジシマカは、足の常在菌に反応しますが、日本にいるオオクロヤブカはお尻の匂いだったり、オーストラリアの蚊は頭の匂いだったり、蚊の種類によって反応するものが違います。もっと蚊のことを知りたいです」

実験道具は、お年玉から費用を捻出。常在菌を培養する“培地”を手作りしたり、ペットボトルを再利用して実験をしているのがスゴイ!受験生にとって大事な高3の夏だが、田上くんはやっぱり“蚊中心の生活”。

「蚊は、夏の深夜0〜2時に活発に動くので、その時間に蚊の実験をしなければいけません。そのため受験勉強は、昼間に。両立は大変ですが、蚊が大好きだからしかたありません。できれば大学は医学部に行って、蚊の実験を続けながら、人間の皮膚についても研究もしてみたいです」