「ねんきん定期便は夫と妻へそれぞれに届くので、夫婦合わせていくら受け取れるのかを確認することが大切です。ただし、ねんきん定期便に書かれている『加入実績に応じた年間額(年額)』から、社会保険料、所得税、住民税などを支払うため、実際には1割ぐらい差し引いた金額が手取りの額になります。そこから生活費をシミュレーションしましょう」

そうアドバイスするのは、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。

一般的に、男性よりも女性のほうが平均寿命は長い。夫に先立たれた後、妻ひとりで生活できるのかをシミュレーションしておくと安心だ。

「自営業で国民年金に25年以上加入している夫が亡くなった場合、18歳の年度末までの子どもと、子どもがいる妻は遺族基礎年金をもらうことができますが、子どもがいない妻は、遺族基礎年金はもらえません。会社員の夫が亡くなると、子どもの有無にかかわらず妻は『遺族厚生年金』をもらうことができます」(井戸さん・以下同)

妻がパートやアルバイトで働いて厚生年金を受け取っているケースでは、次の3つの計算式のうち、最も多い年金額を受け取ることになる(年金は1階が国民年金、2階が厚生年金、企業年金を3階と表する)。

■遺族基礎年金の3つのパターン

【Aタイプ】高収入で働いてきた妻 ・2階部分=自分の老齢厚生年金 ・1階部分=自分の老齢基礎年金

【Bタイプ】専業主婦 ・2階部分=夫の老齢厚生年金の3/4 ・1階部分=自分の老齢基礎年金

【Cタイプ】そこそこ働いてきた妻 ・2階部分=夫の老齢厚生年金1/2、自分の老齢厚生年金の1/2 ・1階部分=自分の老齢基礎年金

たとえば、夫の老齢厚生年金が10万円、妻の老齢厚生年金が4万円の場合のケースで見てみよう。

【Aタイプ】妻の老齢基礎年金に自分の老齢厚生年金を足すので、上乗せ額は4万円となる。 【Bタイプ】夫の老齢厚生年金の3/4が上乗せされるので、7万5,000円がプラスされる。 【Cタイプ】夫の老齢厚生年金の1/2(5万円)、妻の老齢厚生年金1/2(2万円)が上乗せされるので、上乗せ分は7万円となる。

A〜Cの計算した額を比べて最も多いのは7万5,000円のBタイプとなった。これが、自分の老齢基礎年金にプラスされて受け取れることになる。

「夫の老齢基礎年金も含めた年金額を1カ月16万5,000円だとすると、その3/4=約12万4,000円を受け取れると思うでしょうが、遺族厚生年金の上限は老齢厚生年金10万円の3/4、つまり7万5,000円となります」

もうひとつの勘違いは、妻の老齢厚生年金4万円と、夫の老齢厚生年金の3/4=7万5,000円を足した金額、11万5,000円が受け取れると思ってしまうこと。

「妻の老齢厚生年金から優先的に支給され、上乗せ分との差額が『遺族厚生年金』として支払われますから、受け取れる年金額は7万5,000円で、その内訳は妻の老齢厚生年金4万円、遺族厚生年金3万5,000円となります」

寿退職をしないで正社員で働き、遺族厚生年金よりも厚生年金が多い人はAタイプ、専業主婦はBタイプ、そこそこ働いていた人はCタイプがあてはまる。

「夫が亡くなった後、妻の年金収入はどうなるのか3つのタイプで計算してみて、遺族厚生年金を上回ることができなければ“働き損をした”と思うかもしれませんが、老後は長いので夫婦ともに老齢厚生年金があるほうが、退職後の生活費の支えになります」

専業主婦が働き始めるときは、結婚前に働いていた期間の金額を知っておこう。

「妻がもらえる年金」で損をしてしまうことのないよう、自分に該当する項目の確認はお早めに!

「女性自身」2020年10月20日号 掲載