「おねしょは子どもだけでなく、大人にも存在する症状です。成人の約0.5〜2%が『夜尿症』に当てはまるといわれていますが、自分がおねしょしているということを隠したがる人もいますから、潜在的にはもっと多くの人が悩んでいると考えています」

小さいころは誰もが経験するおねしょ。6歳を過ぎても週1回以上おねしょを繰り返すと「夜尿症」と診断される。そんな症状で悩んでいる大人が50人に1人もいる、と冒頭のように語るのは、大人の夜尿症を多く診察してきた「おとなとこどもの仙川泌尿器科」の上杉達也院長だ。

「おねしょは成長とともに自然になくなっていきます。10歳以上で5%まで減っていきますが、なかには成人してもおねしょが続いてしまう人も(一次性夜尿症)。また、成人になってから夜尿症が起きること(二次性夜尿症)も珍しいことではありません。しかし、大人の夜尿症は“深刻な病気”が原因で引き起こされていることが多く、“単なるおねしょ”と看過してほしくないのです」

では、夜尿症にはどんな「大病のサイン」が隠されているのか、上杉先生に解説してもらおう。

■加齢による骨盤へのダメージ

女性に増えているのが、年齢を重ねることで引き起こされる夜尿症だという。

「膀胱や直腸をハンモックのように支えている骨盤底筋群という筋肉は、加齢によってゆるんでいきます。このゆるみが尿漏れにつながるのですが、妊娠・出産で骨盤底筋群にダメージを受けやすい女性はとくに、加齢が原因の夜尿症になることが多いのです」

■便秘や過活動膀胱など

“万病のもと”といわれる便秘は、“夜尿症のもと”でもあると上杉さんは続ける。

「たまった便によって拡張した直腸に膀胱が圧迫されてしまうと、膀胱が蓄えられる尿量が少なくなり、尿漏れを起こしやすくなります。さらに、膀胱が圧迫されつづけると無意識に収縮してしまい、排尿筋が過活動を引き起こすのです」

便秘の人は、頻尿や突然強い尿意を催す過活動膀胱をともなっていることも少なくない。この過活動膀胱も夜尿症の原因のひとつだ。

「伸縮性のある筋肉でできている膀胱には通常250〜350ccの尿を蓄えられ、とくに寝ている間は自律神経が膀胱の緊張をゆるませて1.5倍程度の尿をためられるようになっています。ところが過活動膀胱になると、尿がそれほどたまっていなくても、急に激しい尿意を起こし、漏らしてしまうのです」

■自律神経の乱れ

呼吸器や心拍数など無意識に働く機能をコントロールしている自律神経は、膀胱や尿道もコントロールしている。そのため、自律神経が正常に機能していない場合、「夜尿症」につながりやすい。

「コロナ禍のストレスや外出自粛による運動不足により、自律神経のバランスを乱している人は多く、おねしょに悩む人がこれまで以上に増えているのではないかと懸念しています」

脳腫瘍や心不全など、命に危険が及ぶ病気が引き金となっている可能性もある「大人のおねしょ」。隠された病気を見抜くためにも、「恥ずかしがらずに泌尿器科を受診してほしい」と上杉さんは強く語る。

「泌尿器科というと、どうしても男性が行くイメージが強い女性が多いようです。まして尿のトラブルともなると、相談しにくいと思う方もいるでしょう。しかし、尿のトラブルは、専門家でなければわからないことがほとんど。専門医の診察を受けず、症状の改善のないまま同じ薬を服用し続け、かえって膀胱がパンパンに膨らんでしまい、症状が悪化したケースもあるのです」

病気や心身の不調のサインを見逃さないよう、まずは泌尿器科で診断を受け、自分に隠された大病に適した治療を受けよう。

「女性自身」2021年3月9日号 掲載