家事に介護に、毎日やるべきことは山積みなのに、出口の見えないコロナ禍、しかも梅雨で意欲はそがれるばかり……。そんな折に発表された「自分の顔を見るとやる気が出る」という研究結果。それってホント? どういうこと!?

「人間は自分の顔を見ると、無意識のうちに脳が刺激され、やる気や意欲を引き起こすドーパミンが放出されることがわかりました。仕事や勉強を始める前に自分の顔を見ることで、モチベーションが上がる可能性もあります」

こう語るのは、大阪大学大学院生命機能研究科の中野珠実准教授。先月、イギリスの科学専門誌で発表した、中野准教授らによる研究結果が話題を呼んでいる。

他人の顔よりも自分の顔を見たときのほうが、やる気を強化する“報酬系”と呼ばれる神経回路が働き、ドーパミンが放出されることが明らかになったというものだ。はたして、どんな研究なのか。

「まず、人間の脳が潜在意識レベルで、自分の顔と他人の顔をどの程度見分けているかを調べました。20代の女性22人に協力してもらい、意識レベルでは顔が提示されていることに気づかないサブリミナル(0.025秒)の速さで、自分と他人の写真を次々に見せる。そこで脳がどのように反応するか、その違いを調べてみたのです」

実験で使用した機材はMRI(強い磁石と電波を利用し、人体のさまざまな断面を撮像する装置)。22人に装置の中に1人ずつ入ってもらい、瞬時に写真を提示して、脳内の血流量を測定。その数値データから、脳のどの部分が活動したのかを調べたという。

その結果、無意識の状態でも、脳は自分の顔が提示された瞬間に腹側被蓋野というドーパミンを放出する部位が強く反応することがわかったのだ。一方、他人の写真が提示された瞬間は、腹側被蓋野ではなく、偏桃体という不安や恐怖に反応する部位が活動することが判明した。

「つまり、人間の脳は、潜在意識レベルで、自分と他人の顔を見分けていたのです」

では、無意識状態ではなく、意識的に自分の顔や他人の顔を見た場合では、脳はどう反応するのか。

「自分と他人の顔で、少しきれいに盛った写真と、極端に盛った写真で比較して実験をしました。まず、少しきれいに盛った自分の顔を見たときは、“報酬系”が働いてドーパミンが放出されたのに対し、極端に盛った自分の写真では放出されませんでした」

中野准教授によると、魅力度が上がった自分の顔を意識的に見た場合は“報酬系”が働く。だが、盛りすぎた顔、疲れた顔やさえない顔、変顔などを意識的に見た場合は、“報酬系”が抑制され、むしろ逆効果になるという。

これは他人の顔を見たときも同様で、いくらきれいに盛っていても、ドーパミンは出ないそうだ。