老親との別れは誰にとってもつらいものだが、きちんと相続対策をしておかないと、悲しみにひたっていられる時間なんてない。身近なきょうだい同士で骨肉の争いにならないよう今から備えよう! そこで、読者世代が陥りやすい“争続”トラブルを紹介。具体的な対処法を相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんに聞いた。

【ケース】義母の介護を担ってきた自分にも財産を相続させてほしい

義理の母を長年介護してきた長男の妻。「こんなに頑張ったのだから遺産の一部を相続させてほしい」と思い、夫に相談したところ、「ほかのきょうだいには相続を放棄してもらうように頼んでみる」と答えてくれた。

しかし、きょうだいたちは「法定相続分は受け取る権利がある」と一歩も引かず、「他人に渡すお金なんてびた一文ない。もし、自分たちの相続分がなくなるようなことがあったら、遺留分だけは必ず請求するから」と、すごい剣幕で……。

【対策】遺言書に「嫁に財産を遺す」と書いたうえで、付言事項を活用

このケースのように、長男の妻は法定相続人にはなれないので、基本的には「遺言書」で長男の妻にも財産を遺すと書いてもらうのがセオリーだが、じつはこんな手もある。’19年7月から認められるようになった、相続人への「特別寄与料」の請求だ。

たとえば、長男の妻が「私は長年、義母の介護を頑張ってきたので、遺産の一部をください」と主張すれば、相続人である夫や夫のきょうだいは、要求に応じなければならない。

仮に2,000万円の相続財産を2人のきょうだい(相続人)で相続すると、本来は1人1,000万円受け取れるはずだが、長男の妻が「特別寄与料」として2人に500万円を請求すると、相続人は1,000万円から250万円ずつ、渡さなければならないことになる。

「ただ、相続人である夫や、夫のきょうだいが拒否することもあります。その場合、家庭裁判所に持ち込むことはできますが、手続き的なハードルが高く、この制度を利用する人はまだ少ないと思います。やはり、長男の妻に財産を渡すように、遺言書に書き遺してもらうのが正攻法。『付言事項』といって、なぜそのような分け方にするのかなどを詳しく書く方法があります。法的効力はありませんが、家族への感謝や遺産分割への考え方を自分の言葉で伝えられるので、相続人には納得してもらいやすくなるでしょう」(竹内さん)

実際、竹内さんが手掛けたある遺言書には、介護をしてくれた長男の妻へ感謝の気持ちがつづられていた。さらに、長男の妻と3人の子どもたちで均等に財産を分けるだけでなく、長男の妻には宝石類をプレゼントするという内容も書かれており、この内容を見たほかのきょうだいたちは、あらためて長男の妻に感謝をして労をねぎらう言葉をかけたという。

気持ちのこもった言葉は、残された人の心を動かすのだ。