「私たちの生活様式から和式トイレが減ったのに反して腰痛が増えてきたように感じています。さらにここ2年近くはコロナ禍で外出控えが進み、座る時間が長くなったという人が増えました。これが腰痛人口をさらに増やしていると私は考えています」

こう話すのは戸田リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝先生だ。

日本では腰痛人口が約3,000万人いると考えられており(日本整形外科学会発表)、平成22年の厚生労働省による報告では、男性の自覚症状の1位が腰痛、女性では2位となっている。

日本人の実に約8割が一生のうち一度は経験するといわれる腰痛。まさに国民的症状だ。

「腰痛には椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、ギックリ腰など、さまざまな種類がありますが、全体の約8割が『非特異的腰痛症』といって、骨の異常がなく神経症状もない、腰の筋肉のこりが原因とされている腰痛です」(戸田先生・以下同)

脊柱起立筋(背骨に沿って左右についている大きな筋肉)の腰の部分はスジ状になっており、ここに負担がかかると、筋肉がこり、腰痛を引き起こすようになるのだ。

「デスクワークなどで座りっぱなしの姿勢を長時間とっていたりすると、徐々に骨盤まわりの筋肉が硬くなってきます。私たちは前屈姿勢をとるとき、本来なら骨盤が連携して前に傾くことで全身がスムーズに動くのですが、骨盤まわりの筋肉が硬くなると動きに異変が生じ、腰の筋肉に負担がかかります。これが腰痛に発展していくのです」



■誰もが毎日続けられる簡単なストレッチとして

ほかにも腰痛の種類はあるのだが、実は腰痛の痛みのメカニズムは、すべての腰痛に共通しているのだとか。

「腰痛の大きな原因は長時間筋肉が固定されることで血管が収縮し、筋肉が緊張することです。これが神経を通じて『痛い』という情報となって脳から脊髄に伝わり、脊髄の交感神経が刺激されて血管が収縮して筋肉が緊張する、という痛みの悪循環ができあがります。つまり、痛みをとるには硬くなった筋肉の血流を促して柔軟性をもたせるといいのです」

そこで戸田先生が着目したのがストレッチだったのだ。ストレッチはこり固まった筋肉の血流を促し、筋肉の動きを柔らかくする。だから腰痛の人ほど頻繁にストレッチをするといい。

とはいえ、臨床の現場を見てきた戸田先生は、ストレッチをすることを面倒がる人が少なくないことも知っているという。そこで誰もが毎日続けられるような簡単なストレッチを考えた。

「ヤンキーがしゃがむ格好は実は腰痛にはよいポーズだったんです。なので、私はこれを『ヤンキー座りストレッチ』と呼んでいます」

【ヤンキー座りストレッチ】 (1)足を肩幅ぐらいに開き、膝と股関節を曲げ、お尻を落としてしゃがむ。 (2)腰が伸びるように少し前かがみになる。 (3)ウエストのくびれのライン上にある背骨から、お尻の割れ目のきわまでを、両手のゲンコツで圧迫しながら上から下に20回こする。

骨盤まわりの筋肉を柔らかくし、こすることで腰の筋肉の血流を促すのだ。

「和式トイレが少なくなっているため、ヤンキー座りができない人も増えていますが、足腰の筋トレにもなるので、つかまりながらでもいいので、やってみましょう」

ヤンキー座りができないのは骨盤まわりの筋肉が硬くなっている証拠。まずはこのポーズをしっかりとるところから練習してみよう。

「ヤンキー座りはあらゆる腰痛に有効ですが、特におすすめなのが腰部脊柱管狭窄症の人です。この姿勢をとることによって神経の管が広がり、即座に痛みが消えてしまうこともあるほど効果的です」



■お風呂上がりに取り入れると良質な睡眠の効果が

1日に最低3回は実践してほしいと戸田先生。特に実践してほしいのが寝起き、長時間座った後、そしてお風呂上がりだという。

「腰の筋肉が固まっているときは、急に動かすとギックリ腰になったり、腰に痛みが走ったりと、腰のトラブルが起こりやすいタイミングです。寝起きや長時間座った後に立ちあがるときはヤンキー座りストレッチを取り入れてみましょう。お風呂上がりは良質な睡眠をとるのに効果的です。体が温まって血流が促進されたところにこのストレッチをすると、腰がほぐれて入眠しやすくなります」

腰痛の人は、膝や背中などほかの部位にも痛みが出る傾向があるという。腰痛の再発を予防するためにも、体幹部分の筋肉の緊張をほぐすことは大切だ。

「私たちの体の細胞は、いくつになっても日々生まれ変わっています。全身の皮膚がすべて生まれ変わるのが1カ月程度といわれていますので、筋肉の柔軟性についても同程度の期間を目安にストレッチを継続してみてください」

腰痛知らずの日々をおくるためにも、日々のヤンキー座りストレッチを続けよう!