’22年1月から「傷病手当金」が改正される。傷病手当金とは、病気やケガで会社を休んだ人に、最長1年半の間、給料の3分の2相当を支給する制度だ。そんな傷病手当金の改正について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

■保険は安心を買うものではありません

これまでは、「同一の病気で最長1年半」が決まりでした。支給開始から1年半のうち、途中で出勤した日を除いて、実際に休んだ日数分の傷病手当金が支給されます。がんなどで数カ月おきに治療を受けながら休職と復職を繰り返す場合、1年半が過ぎると治療中でも傷病手当金は打ち切りでした。

また、病気の再発や精神疾患などで復職後に体調が悪化したときも、以前と同じ病気とみなされると、1年半の支給期間中は傷病手当金が出ますが、それを超えると打ち切りになり相当な痛手でした。

今回の改正では、支給期間が「通算1年半」となりました。支給期間の延べ日数には関係なく、出勤日数を除いて、実際に休んだ日数だけを累計して1年半になるまで支給されます。

日本の労働者の3人に1人が何らかの病気を抱えながら働いているといわれます(厚生労働省)。今後はそうした方々も安心して、休暇中は傷病手当金をもらいながら、治療と仕事を両立することができるでしょう。

傷病手当金がかなり手厚くなったので、この機会に「医療保険」の必要性を考えてみましょう。

まず、医療費には「高額療養費制度」が使えます。年収や年齢により自己負担額の上限が決まっていて、上限を超える医療費がかかったときに申請すれば超えた分が返金される制度です。現役世代の一般的な収入(年収約370万〜770万円)の方だと、自己負担額の上限は月約9万円です。

次に療養中の生活費が必要ですが、会社員には傷病手当金があります。医療保険の入院日額は入院した日数分しか出ませんが、傷病手当金は退院後の療養期間も含めて休んだ分だけ支給されます。多少の貯金があれば、医療保険に頼らなくてもよいのではと思います。

問題は、自営業者など国民健康保険に加入する方です。というのも、国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、自分で病気に備えないといけないからです。

自営業の場合も、医療費は高額療養費制度を使って、一般的な収入の方で月約9万円です。また、療養中の生活費がたとえば月30万円必要だとしても、先の医療費とそのほかの必要経費を加えて、1カ月間で約50万円です。

ということは、貯蓄が50万円あれば、医療保険がなくてもなんとかなりそうです。

保険は入院や通院している間しかお金がもらえない場合が多く、安心を買うものではありません。

それでも心配な方や貯蓄がない方が医療保険に加入するとしたら、どんな病気にでも広く浅く使えて、特約の少ないシンプルな保険を少しでよいでしょう。病気への備えは、保険より貯蓄がおすすめです。