’22年4月に制度の一部が変わる年金。高齢化真っただ中での今回の“年金大改正”は、長生きを前提に、年金をできるだけたくさん増やせるようにするというもの。

「人生100年時代を迎えて、夫の定年退職時が“人生の折返し地点”という人たちが多くなります。長い老後を安心して過ごすためにも、受け取れる年金収入がいくらなのかを、まずは『ねんきん定期便』で確認しましょう。長生きすることを想定して、年金をどれだけ増やすことができるのか。夫の定年前に把握することが大切です」

そうアドバイスするのは、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。今回の年金大改正で得するための条件として、井戸さんが教えてくれたのが「受給開始年齢を遅らせる」「なるべく長く働き続ける」「できるだけ収入を増やす」の3つ。

「誰でもできるのは『年金の繰り下げ』ですが、その前に必ず、夫婦で年金収入がいくらになるのかを調べておきたいですね。『まだ先のことだからいいや』といって放置している人も多いようですが、遅くとも50代のうちに、年金収入だけで生活が成り立つのか、家計の見直しをしておきましょう。老後のお金がどれくらい足りなくなるのかがわかれば、いつまで働けばいいのか、いつまで年金受給を繰り下げればいいのか、といった方向性も見えてきます」(井戸さん・以下同)



■65歳以降も“夫に働いてもらう”ことが欠かせない

繰下げ受給を選択するにしても、その期間は年金以外の収入でまかなえる生活設計を立てる必要があることを考えれば、「なるべく長く働く」「できるだけ収入を増やす」の要素が大きいという。

「現役生活に一区切りつけてしまうと、『なかなか働くスイッチが入らない』という声を聞きます。働きたくない夫に無理に働いてもらうようにすると、そこで夫婦ゲンカにもなってしまいます。ですから、単にお金のことだけではなく、会社を辞めた後の生活をどうするのか、といったことを含めて、65歳以降の生活を夫婦で考えてみることをおすすめします。特に、仕事をスッパリ辞めてしまった人は、将来への不安が尽きないうえ、『妻以外の人と話すことがない』『何もすることがない』という状態に陥りがち。それがストレスのもとになり、心身の不調を訴える人もいるくらいです」

それでは定年以降、夫にはどんな働き方をしてもらうのがいいのだろう。

「外に出ることは健康をキープすることにもつながりますので、趣味やサークル活動を楽しむ時間を持ちながら短い時間働く、といった選択肢もありですね」

とはいえ、70歳まで年金を繰り下げる計画を立てるのであれば、年金以外の収入がないからといって貯蓄を取り崩すのはNG! 将来、病気や介護が必要になったときに備えて手をつけないでとっておきたい。

「繰り下げの待機中はマイペースに働くことが大事。夫がどうしても『フルタイムで働くのはもう嫌だ』ということもあるでしょう。その場合は、企業年金に加入していた人であれば、その受給分だけを生活費に回したうえで、そのほかに必要な分だけ働いてもらえば十分です。老齢厚生年金だけを65歳から受け取り、老齢基礎年金は繰り下げて、生活の不足分は働いて得る、という選択肢も出てきます。妻がフルタイムで働く代わりに、夫は家のことを手伝う、というように、夫婦で役割分担をすることも円満の秘訣です」



■2つの改正ポイントで働くモチベーションアップ

さらに今回の改正では、老後も働き続けるモチベーションを維持するための制度変更もある。

これまで、60〜65歳で年金を受け取りながら働くときは、年金収入と働いて得た収入の合算が月額28万円を超えてしまうと年金額が調整されていたが、’22年4月からはその基準額が47万円に引き上げられる。

さらに、これまでは70歳にならないと、65歳以降に納めた厚生年金保険料は支給額に反映されなかったが、’22年4月からは、働いて納めた厚生年金保険料が、翌年の老齢厚生年金に反映されるようになる。つまり、もらえる年金が目に見えて増えるので働いた実感がわいてくるのだ。

また、今回の大改正に合わせて、働き方の法整備も進み、65歳から70歳まで働く機会を確保することが企業側の努力義務となった。

「改正高年齢者雇用安定法で、70歳まで働く時代が本格的にやってきました。企業は今後70歳まで定年を引き上げるだけでなく、定年制そのものを廃止し、起業する人やフリーランスになる人への業務委託などを進めることになっていきます」

再雇用で同じ会社で働き続けるほかにも、転職や起業、フリーランスになるなど、老後の働き方が多様になるこれからの時代。夫はもちろん、妻だって元気なうちは働くに越したことはない。ペースを崩すことなく夫婦で働き、「老後の資金」と「健康」をゲットする。そんな一石二鳥を目指すべし!