コロナ禍前の日常が戻りつつあるなか、英国からコロナ後遺症の衝撃的な報告が飛び込んできた。

《コロナ感染による認知障害は脳を20年分老化させる》

英国・ケンブリッジ大学などの研究チームが、5月1日、医学誌『ランセット』でこんな報告をしたのだ。米ボストン在住の内科医、大西睦子先生が解説する。

「新型コロナウイルスに感染し、2020年3月10日〜7月31日までに、集中治療を受けた46人の患者を対象とした調査です。感染から平均6カ月後に、記憶力や注意力、推論能力などを正確に測定できるAI(人工知能)を活用した詳細な認知機能テストを実施しました。その結果、46人すべてに、さまざまな刺激に対する反応が遅くなったり、不正確になったりするなどの認知障害が確認されたのです」

46人の内訳は女性27人、男性19人で、平均年齢は51歳だった。研究では、これらの患者と一般市民6万6008人の比較調査も実施。その結果、患者46人の認知機能の衰えは、健常な人が50歳から70歳まで20年かけて認知機能が低下していくのと同程度であると推定された。

「つまり、新型コロナの感染によって20歳分も脳が老化するリスクがあることが示されたのです。研究チームのひとりは、患者の認知機能の低下は、IQ(知能指数)で示すと10ポイント下がったのと同じだと、別の寄稿文で表現しています」(大西先生)

とりわけ46人の患者のテストで悪かったのが「言語的類推」の成績だったという。

「たとえば“靴ひもと靴の関係は、ボタンと何の関係に似ているか?”という問いに答えるような問題です。これはコロナ後遺症のひとつで、言いたい言葉が頭の中で見つからず口に出せない『換語困難』という症状です。また脳が情報を処理する速度も低下したことが明らかになりました。認知障害がゆるやかに回復した患者もいましたが、入院後10カ月たっても障害が残っていたケースもあったそう。研究チームは《完全に回復しない患者が残る可能性は非常に高い》としています」(大西先生)

ケンブリッジ大学の研究は、コロナの重症患者が対象だ。現在、ワクチンの普及や変異株への移行で、重症化リスクが低くなっているが、今年3月に英オックスフォード大学の研究チームによる報告によると、軽症者でも脳の萎縮や認知機能が低下することがあることが報告されている。

後遺症になるリスクを軽減させるとされるワクチンの接種、そしてそもそもコロナに感染しないように感染予防は続けよう。