新型コロナウイルスによる後遺症が認知障害を招くメカニズムははっきりしていない。免疫調節不全による炎症の進行、血栓症による血管損傷などの説があるが、未解明な部分が多い。

6月1日、厚生労働省に助言する専門家会議において、こんな調査結果が発表されたからだ。

慶應義塾大学医学部呼吸器内科の研究チームが、2020年1月から2021年2月までに、コロナ陽性となった男女1066人を対象にコロナ後遺症について追跡調査を実施。

すると、陽性になって1年たっても、後遺症を訴える人が多くいることがわかったのだ。

なかには、倦怠感(1年後13%)、集中力低下(同8%)、睡眠障害と記憶障害(同7%)と、脳に由来する可能性のあるものも含まれている。気がかりなのは、この調査対象者のうち、無症状を含む軽症者や、呼吸不全のない中等症Ⅰの患者が6割以上を占めていることだ。これまで4000人以上の後遺症患者を診察してきたヒラハタクリニック院長の平畑光一先生が語る。

「3月に英オックスフォード大学の研究チームが、コロナ感染者の脳の画像を解析した結果、軽症だった人でも、脳が0.2〜2%萎縮することを確認。認知機能の低下も認められたと報告しています。

コロナに感染することで、脳に変化が起き、認知障害を招く可能性は十分に考えられます。私も、軽症や無症状でもブレインフォグと呼ばれる頭に靄がかかったような後遺症を訴える患者さんを多く診てきました」

ブレインフォグの症状が出ると、日常生活もままならなくなることも。

「常に2日くらい徹夜したあとのように、思考力や集中力も低下。メールが打てなくなる。言われたことが覚えていない。会話も困難になって、仕事を辞めざるをえない人も少なくありません」

ブレインフォグを含む、コロナ後遺症は女性のほうがなりやすいという。

「当院の統計では、男性よりも女性のほうが後遺症を患っています。後遺症の原因のひとつに、自己免疫があります。自己免疫の病気として知られている関節リウマチも女性に多く、同様のメカニズムが働いている可能性があります」

とはいえ、認知障害を含む後遺症は、適切な治療で改善できる余地は十分にあると、平畑先生。

「コロナ後遺症の患者さんは、鼻とのどの間にある上咽頭に炎症が起きているケースが多い。その炎症を抑える治療で、ブレインフォグなどが改善することがあります。また漢方や鍼灸なども含む、地道な治療でよくなる患者さんもいます」

“脳の後遺症”を放置して、無理して脳を使うことで、症状が悪化するリスクは格段に上がる。

「感染力が強いが軽症や無症状で済むケースが多いオミクロン株ではとくに注意が必要です。認知障害が出た際に、コロナの後遺症の可能性があることを知っておきましょう。ワクチン接種で後遺症になるリスクが半減するという報告もありますが、何より感染しないことが大切です」

コロナを「風邪と同じ」と楽観視せずに、対策は続けよう。