熱中症に“塩バナナ”の新習慣 医師が教えるおいしい予防法
そんな熱中症対策に注目の方法がある。バナナに塩を振りかけるだけという、『塩バナナ』だ。
この塩バナナを考案したのは、介護老人保健施設「はまなす」施設長で医師・医学博士の福田六花先生。ふだんは介護老人施設で医師として入居者の健康管理をしているが、その傍ら年間30以上のマラソン大会や山道を走るトレイルラン大会に出場、各種大会のプロデュースも手がける。
「塩バナナは’10年にランナーの補給食として私が提案しました。バナナは、安価で手に入り、携帯に便利でいつでも食べられる食品としてバツグンの補給食です。しかも、ほかの果物に比べて炭水化物を多く含み、栄養価が高いという利点も。消化がいいため、すぐエネルギーに変換され、補給食として効率的なのです」(福田六花先生・以下同)
さらにバナナには豊富な栄養素が。
「バナナには各種ミネラルも豊富に含まれています。特筆すべきカリウムは、りんごの3倍、みかんの2.4倍。マグネシウムはりんごの6.4倍、みかんの2.9倍も。これらのミネラルは、体の機能を正常に維持するために欠かせない栄養素。特にカリウムは、ナトリウムと相互に作用しながら細胞の浸透圧や塩分濃度を調整し、体内の水分を保持する役割があるのです」
■ミネラル豊富なバナナに含まれていないナトリウムを摂取
また、マグネシウムは代謝やエネルギー生産にも深く関与。筋肉の収縮を制御したり、血圧を下げたり、血栓をできにくくする働きもある、と福田先生。
けれどもこうしたミネラル豊富なバナナにも、ほとんど含まれていないのがナトリウムなのだ。
「先に述べたとおり、カリウムはナトリウムとともに作用して体液の濃度を維持・調整しますが、ナトリウムがないと、これが機能しないのです。汗をかくことでナトリウムが排出されますね。すると、体が水分を保持できなくなり脱水症を起こしてしまいます。暑いときに脱水症になると体内に熱がこもり、熱中症のリスクも上昇し、めまい、湿疹、筋肉の痛みや硬直、頭痛や吐き気などの症状が現れます。ひどくなるとけいれんや意識障害のおそれも。このように脱水症や熱中症の予防には、ナトリウム、つまり塩分の摂取が欠かせません」
そこでおすすめなのが先生考案の塩バナナだ。作り方は、超カンタン。バナナの皮をむいて全体に塩ひとつまみを2回ほど振るのが目安。塩は食卓塩でもよいが、ミネラルにこだわるなら海塩や天然塩もよいだろう。時間帯は栄養補給目的ならいつでもOK。1日に1本が目安だが、朝に1/2を食べ、夕方1/2にしてもよい。
「もとはランナーに、レース中にバナナと塩を両方とってほしいと、補給所に塩バナナを置いたことから始まりました。山梨県の道志村のトレラン大会ではもう10年にわたって塩バナナを提供しています。それまで脱水症で足をつる人が多かったのですが、塩バナナ提供後は大幅に減りましたね」
この塩バナナの存在を知り、工場や建設現場などでこれを取り入れる会社も増えているという。
■こむら返りにも効果を発揮。夜のおやつに塩バナナと水を
なお塩バナナは、こむら返りにも効果を発揮する。
「主に運動中や就寝時にふくらはぎが急にけいれんを起こして足がつる状態を、こむら返りといいます。こうした筋肉の異常な収縮・硬直を防ぐにはマグネシウムをはじめとしたミネラルを補給することが大切。私は、こむら返りを訴える患者さんには、夜のおやつに塩バナナと水をとることをすすめています。患者さんからはとてもよい反応を得ていますね」
子どもから大人まで熱中症には用心しなければならないが、特に年齢を重ねると、のどの渇きや体調の変化をなかなか感じなくなるため、体から水分が失われていることに気づきにくい。
予防にはこまめな水分補給が肝心だがお茶やコーヒーは逆効果。ミネラルを含まないうえ、カフェインに利尿作用があるので、水分の排出を促すことになる。また、スポーツドリンクは糖分が多いのでこちらも要注意だ。
「塩バナナといっしょにとるなら、ただの水でも十分に熱中症対策に効果があります」
塩を振ることで甘味も引き立ちおいしい塩バナナ。あなたも毎日の習慣に、ぜひ取り入れてみて!
【PROFILE】 福田六花 介護老人保健施設「はまなす」施設長で医師・医学博士。山梨県老人保健施設協議会会長。医師業の傍らランナーとしても活躍。プロのミュージシャンでもある[タイトル]