《温水洗浄便座を1日2回以上使用する人は、便失禁が重症化する》

10月14日、第77回日本大腸肛門病学会学術集会で発表された研究報告に注目が集まっている。排便後のお尻洗浄は、今や私たちが日常的に行うルーティン。だが、過度な洗浄が“うんち漏れ”のリスクを高めるというのだ。

「今回のデータは、便失禁のある37〜92歳までの患者さんを対象に、4週間、温水洗浄便座の使用をやめていただき、症状の変化を評価しました。その結果、81人中31人が便失禁の症状がなくなり、それ以外の37人も重症度が半分ほどに低下。このほかにも使用方法などを細かく分析した結果、1日2回以上使用する人は便失禁が重症化するということがわかりました」

こう語るのは、学会で研究発表をした亀田総合病院消化器外科部長の角田明良医師。角田医師によると、加齢とともに肛門括約筋の機能が低下し、肛門の締まりは緩くなる。すると、洗浄の際に水が直腸に入りやすくなり、便失禁を起こす要因となってしまうのだという。

「年齢を問わず、肛門の締まりが弱くなっている人が、温水洗浄便座で水圧の強い水をたとえば1分以上、1日何回も使用していると、肛門の外側を洗っているつもりでも、水が直腸内に入って残ってしまうことがあります。水が残ると、便を出し切ったと思っていても、トイレを出て歩いているうちに、便と水が混じった形で便失禁を起こしてしまうことがあるのです」(角田医師・以下同)

女性のなかには、おしっこの後にビデを使って洗浄したついでに、肛門も洗っているという人も……。

「そういう人は、1日に何回も肛門を洗浄していることになるので、直腸に水が残るリスクが増えます。特に肛門括約筋が弱い人は漏れやすくなるため推奨できません」

便失禁診療ガイドラインによると、潜在患者は約500万人もいると推計されている。これまで原因がわからず、うんち漏れで悩んでいた人は、温水洗浄便座の使用法に原因があったのかもしれない。では、便失禁を起こさないようにするための正しい使用法とは?

「いつも患者さんにお話しするのは、温水洗浄便座を過度に使わないこと。1日1回にとどめ、水圧は最弱に設定し、肛門の外側周辺に水を5秒あてる程度に抑えましょう。これで十分清潔に保てます」

洗浄するときのコツは、お尻をすぼめるようにちょっと力を入れるといいそうだ。洗う瞬間にお尻をキュッと閉じると、水が直腸に入っていかない。反対にお尻を広げてリラックスすると、肛門が緩んでしまい、水が入ってしまうことがあるので注意したい。加齢とともに便失禁に悩まされないためにも、これからは肛門の外側を5秒間チョロチョロ洗浄するように心掛けて。