12月17日、2020年の日本の「時間あたり労働生産性」がOECD加盟38カ国中23位となり、データが取得可能な1970年以降、最も低い順位となったことが、日本生産性本部の調査で判明した。G7(先進国首脳会議)では最下位。米国の6割ほどの水準だという。

「日本企業の生産性は低い!」「日本経済の課題は生産性が上がらないことだ」。「生産性を上げろ!」。そんな文脈でよく聞く生産性という言葉。だが、本当に意味をわかって使っているだろうか。そもそも「生産性」ってなに?

■“勤勉”なはずの日本がなぜ低いの?

「『時間当たり労働生産性』とは、企業の付加価値(売上から原価などを除いた分)と、それにかける労働時間・労働者数との割合のことです。生産性の数式はシンプルで『付加価値』÷『労働時間×労働者数』となります」

そう解説してくれたのは経済評論家の加谷珪一さんだ。『時間あたり労働生産性(以下・生産性)」は、1人の従業員が1時間にどれくらいの製品やサービスを生み出したかを数値化したものだ。たとえば、10人の従業員が8時間かけて40万円の付加価値を生み出した場合、「40万円÷(8×10)」で生産性は「5,000円」という値になる。

2020年の日本の生産性は49.5ドル(約5,086円)。一方、米国は80.5ドル(約8,282円)だったという(OECDで7位、G7では1位)。だが、ここで疑問が……。日本人といえば、ずっと勤勉だと言われてきた。なのに、日本はなぜ生産性が低いのだろう?

「日本人は一生懸命働いています。でも、労働時間が長く労働者数も多いのに、そもそもの『儲けが小さい』んです。たとえばイタリアが、人口の5分の2ほどしか働いていないのに豊かなのは、各企業が生み出している付加価値が高いためです。フランスも各企業の生み出す付加価値が高いため、日本に比べて国が豊かです。たとえばシングルマザーへの国の手当は厚く、働かなくても生活できる水準なんです」

つまり「労働時間×労働者数」が大きいのに、「付加価値」が小さいので生産性の値は小さいのだ。生産性はその国の豊かさに直結する。

「生産性が高くなれば、給与も高くすることができます。逆に生産性が下がってしまえば、給与は上がらなくなる。そして、付加価値を生み出すために長時間労働となり、生産性はさらに下がり、過労死するリスクも高まる……負のスパイラルに陥るんです」

■ずっと低かった日本の生産性

じつは、データが取得可能な1970年以降、日本の生産性はG7でずっと最下位だったという。ということは、日本が一躍先進国に躍り出た高度成長期や、“ジャパン・アズ・ナンバーワン”とまでいわれた80年代のバブル期ですら、生産性が低かったということになるが……。

「残念ながら、そうなんです。日本企業は終身雇用制で正社員の解雇は難しく、余剰人員はずっと多かった。一方、欧米はそれと比較して3分の2ほどの人数で生産してきました。しかも、バブルが崩壊した90年代以降、ほかの先進国との生産性の差が拡大しています。各国では企業が積極的に経営システムを変え、先端技術であるITツールを“われ先”に導入しました。ところが、日本だけがIT革命に乗り遅れてしまった」

その背景には日本の経営者の“サラリーマン意識”があるという。

「欧米の経営者の報酬は、多くは業績変動型のため、経営者の判断でITを導入して利益が2倍にでもなれば、経営者自身の報酬もグンと上がるわけです。しかし、日本の上場企業の経営者は軒並み年功序列型で、3、4年後には後輩に地位を禅譲します。そのため、短い任期中、冒険せず問題なく過ごして、無事に退職金をもらおう……と。これでは各国と生産性に差がついで当然です」