来年度以降の税制度の改正方針をまとめた「税制改正大綱」が、12月半ばに発表されます。内容は多岐にわたりますが、今回の注目点の1つは、贈与税・相続税制度の見直しです。

贈与税はもらった人が払う税金です。ただ1〜12月の1年間で110万円までの贈与は非課税で、申告も不要。これが暦年贈与です。たとえば2人の子どもに100万円ずつ贈与する場合、それぞれの子どもがもらったのは年110万円以内ですから、贈与税はかかりません。一方、1人の子どもに父からも祖父からも贈与があった場合、合算して110万円を超えると贈与税が発生します。

生前に暦年贈与を繰り返し、相続財産を減らして、相続税を減らすことは可能です。しかし、死亡時からさかのぼって3年以内に贈与された財産は、「持ち戻し」といって相続財産に含めて相続税を計算することになっています。その持ち戻し期間を、今回の税制改正大綱で5〜10年に延長するのではないかといわれています。

国は社会の資金循環を促すために、高齢者が持つ資産を若い世代に早く移転させたいと理由付けしていますが、持ち戻し期間の延長は課税期間の延長。つまり、事実上の増税です。今回の税制改正大綱で相続税の“増税”を盛り込むのか、見守りたいと思います。

■多くの人に該当する贈与税にも注意

そもそも相続税は(3千万円+600万円×法定相続人の数)を上回る財産にかかってきます。たとえば、夫婦と子ども2人の家庭では、夫が亡くなったときの法定相続人は妻と子ども2人の3人。先の式で計算すると、4800万円を超える相続財産があれば相続税が発生しますが、それ以下なら相続税はかかりません。持ち家で都心にお住まいの方など、土地代が高額になりそうな方は注意が必要です。まずは、自分の相続財産を洗い出してみましょう。

相続税の対象になる方は、相続税がかからない程度まで相続財産を減らすために暦年贈与を使う手もあります。先述のとおり、持ち戻し期間の延長が予想されるので、手を打つなら早いうちに。いっぽう、ほとんどの方が相続税の対象外です。20年に亡くなった方のうち相続税の申告をした方は8.8%にすぎません(国税庁)。

注意したいのは贈与税です。相続税の対象でなくても年110万円を超えると贈与税はかかるからです。ただし、親や祖父母から生活費や教育費など通常必要な費用の援助は例外です。病気療養費や大学入学費用などの援助は110万円を超えても贈与税はかかりません。

「相続はお金持ちの問題」とよくいわれますが、相続のもめ事に財産の多寡は関係ありません。その証拠に、相続裁判の3分の1が1千万円以下の財産を争っています(21年・最高裁判所)。特に不公平感のある生前贈与や資金援助はもめるもとです。くれぐれもご注意ください。