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本誌のドキュメンタリーページ『シリーズ人間』に登場し、「あのキレイだけど押しの強い弁護士はナニモノ?」と、巷をにぎわせた仲岡しゅん弁護士。その正体は、男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士!大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士は、悪を許さぬ正義感と、美貌に似つかぬ義理人情を盾にして、法律を武器に日々奮闘中。そんなハイブリッド弁護士がトラブルをシュッと解決!

【今回の相談】「夫の不倫が原因で別居中です。私は以前からブログをしていて、最近は友人に愚痴をこぼすように、夫の彼女や職場など実名入りで書き込んでいたところ、それを読んで激怒した夫から『名誉毀損で訴える』というメールが。そもそも、悪いのは夫で被害者は私だと思うのですが、それでも名誉毀損になりますか?」(40代女性・専業主婦)

【回答】「具体的な浮気の事実を嫌がらせ目的で大っぴらにした場合には、名誉毀損が成立する可能性が高い」(仲岡しゅん)

今回のお悩みです。論点は、夫の不倫の詳細を世間一般に公開しているブログ上に実名入りで書いたことが名誉毀損になるかどうか、ということですわね。まず、注意しなければならないのは、「書いた内容がたとえ真実であっても、相手の社会的評価を貶めるものであれば、名誉毀損になりかねない」ということです。

このあたり、誤解されている方が多いのではありませんこと?嘘を書くのはNGだけど、本当のことならOKーーというわけでは、必ずしもないのです。

刑法第230条の2第1項によると、次の3つの要件をすべてクリアしている場合には、名誉毀損罪にはなりません。民法上の名誉毀損、つまり慰謝料支払いの義務を問うときも、ほぼ同様にこれらの要件が考慮されると考えてよいでしょう。

名誉棄損にならない第一の要件として、公共の利害に関するものであること。政治家のスキャンダル報道などがそれに当たります。政治家は公人であり、政治の評価にも関わることですから、公共の利害に関するとみなされるのです。一方で、私人の私的な事柄を書いた場合は、名誉毀損になりかねません。

第二に、もっぱら公益を図る目的であること。たとえば、悪徳商法の被害にあった人が、ことの顛末をブログでつまびらかにした場合。世間に向けた注意喚起は公益目的と言えるでしょう。逆に、個人的なうらみの吐露や嫌がらせが主目的であれば、公益とはみなされず、名誉毀損となる可能性があります。

そして第三に、書いた内容が真実であること。平たく言うと、真実(あるいは真実だと信じるにいたるに相当な理由がある場合)はOK、嘘ならNG=名誉毀損になる可能性が高い、ということですね。

以上の3つを満たしていれば、名誉毀損を免れる可能性が高いです。しかし、ご相談者の場合、夫が不倫したという事実が「真実」だとしても、貴女のブログの書き込みは「公共性」と「公益性」を備えていないように思われます。貴女と夫との夫婦関係は、貴女にとっては重要な事柄ですが、私人のプライベートにすぎません。それを表明したからといって、公の利益になるわけでもありません。

要するに、一般人の具体的な浮気の事実を嫌がらせ目的で大っぴらにした場合には、名誉毀損が成立する可能性が高いということです。不倫した夫をとっちめるために、ブログやYouTubeでねちねち責めても法的にいいことはひとつもありません。裁判で正々堂々と争う、というのが大人の、エレガントな戦い方というものです。わたくしは、そうしてます。