日本病理学会と日本内科学会は11日に会見を開き、病理解剖(剖検)の許諾に関する教育方法について内科学会の認定教育施設に行ったアンケート調査の結果を発表した。調査結果では、遺族への許諾を得る段階から実地を見て学ばせる指導方法が多いことが分かり、会見では「剖検は究極のOJT(On the Job Training)」との指摘がなされた。

 剖検の実施数は年々減少しており、日本病理剖検輯報に登録されている症例数は2004年が2万411件であったのに対し、2014年には1万1067件。この10年間で約半数となっている。剖検は主治医が遺族から許諾を得ることから始まるため、病理学会と内科学会は剖検の許諾についてどのような教育が研修医に行われているかを明らかにする目的で調査を実施。昨年4月、内科学会の認定教育施設982施設にアンケートを依頼し、492施設(50.1%)から回答を得た。

■許諾を得る際に遺族の心情、拒否に苦労
 
 遺族に対する剖検の許諾のお願いについて、研修医にどのように指導しているかとの質問に対しては、「上級医が説明している場に立ち会う」が最も多く73%。講義などの機会を設けている施設は8%に留まった。剖検に関する教育内容については、多くの施設が「病理解剖の意義」「CPC(臨床病理症例検討会)」を指導していた。

 許諾を得る際の苦労を自由回答で聞いたところ、遺族の心情、拒否に関するコメントが多く記され、遺族全員の同意を得ることの難しさも複数の施設からコメントされた。

■「剖検は内科医の診断・治療が正解だったのかを知る唯一の機会」

 調査結果を受け、会見で内科学会認定医制度審議会の横山彰仁会長は、「剖検は上級医の背中を見て学ぶ究極のOJTであり、なかなか教科書や文章で教えられないことを再確認した」と述べるとともに、「剖検は内科医の診断・治療が正解だったのかを知る唯一の機会。そうした経験の蓄積こそが立派な内科医をつくるので、剖検には教育的側面がある」と指摘。その上で、専門医制度を活用して、剖検費用の医療機関の負担軽減など剖検数を増やす仕組みについて検討する必要性を指摘した。

 病理学会の深山正久理事長は、学会ウェブサイトで一般向けに剖検の必要性をアピールする「病理解剖によってわかること・できること―こんな場合には病理解剖を」というQ&Aを掲載していることを紹介し、各施設で活用することに期待を示したほか、質の高い剖検ができる体制について「各学会と協力して築いていきたい」との意向を示した。

■剖検の減少は世界的傾向

 なお両学会によると、剖検数の減少は世界的傾向で1970年代から見られるという。その要因は画像診断の進歩、病態が比較的単純化されている癌の増加、在院日数の減少による患者家族との接触機会の減少、医師の働き方の変化、社会の価値観の変化―などが考えられているという。