4月下旬に名古屋市で開かれた第30回日本医学会総会(4月27〜29日)では、3日目の29日に医師の社会的使命と過重労働を巡る討論も行われ、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」報告書(今年3月)に盛り込まれた時間外労働上限規制の暫定特例「年1860時間」に対し健康影響を懸念する意見などが出された。

 討論には、三重大公衆衛生・産業医学分野教授の笽島(そうけじま)茂氏、元日本医師会副会長で参議院議員の羽生田俊氏、前中医協会長で行政学者の森田朗氏(東大名誉教授)らが参加した。

 疫学研究のエビデンスに基づき長時間労働が心筋梗塞などの発症リスクを引き上げる可能性を指摘した笽島氏は、地域医療確保のために設けることとなった暫定特例が医師の健康に与える影響に懸念を表明。

 一方、森田氏は「医師の働き方を含め時間だけを考えて労働の管理をしていくこと自体が限界に来ている。基本的な考え方は生産性。そこから管理のあり方を考えていかなければ現実の問題は解決しない」と指摘。

 医師などの高度な能力を持つ専門職についても「もっと効率的に時間を使い、生産性を最大化する。他の人ができる仕事はできる限りタスクシフティングし、医療機関のシステム全体として資源の使い方を効率化していくべき」と述べ、院内のシステム改善を促す制度づくりを求めた。

■「長時間労働是正には財源が必要」
 
 自民党厚生労働部会「医師の働き方改革プロジェクトチーム(PT)」の座長を務める羽生田氏は、勤務医の長時間労働を是正するためには財源の確保が必要と強調。「PTとしても政府に申し入れたが、1人の医師が行っている医療を2人で分ければ、それだけ人件費もかかる。これに対してはどうしても財源が必要になる」と訴えた。

 このほか、産業医・労働衛生コンサルタントの立場から発言した櫻澤博文氏(合同会社パラゴン代表)は、医療業界が働きやすい職場づくりを進めるために、80項目版の「新職業性ストレス簡易調査票」を活用し、それに基づく集団分析、職場環境改善計画を進めることを提案した。

 フロアの医師会関係者からは、過重労働の問題を解決するには診療科偏在の解消が不可欠として、ハードな現場に医師を誘導するための金銭的なインセンティブを求める声が上がった。