1月28日に奈良県在住の日本人で新型コロナウイルスの感染が確認されました。この方は武漢からの訪問者と接したことと肺炎を発症したことで検査に至り、確定診断されたものと思われます。

 ニュースでは「無症状の潜伏期間に他人に感染させる可能性」が報じられています。このような情報を基にすると、「対応ができない」「対応しても意味がない」と思考停止に陥る可能性があるのですが、まずは発症している人からの感染拡大を防ぐことが重要になります。

 特に重症化のリスクを抱える人が集まる医療機関においては、インフルエンザの流行が続いていることもあり、より一層強化した患者の誘導や空間的な分離を行い、他の患者に感染させないようにしたいものです。場合によっては、電話で事前に連絡をして受診をしてもらう体制が必要になるでしょう。また、発熱患者などの受付から会計、さらには処方までを優先しつつ、感染対策ができる対応も必要になるでしょう。

 また、咳をしている患者にはマスクを装着するように促したり、場合によってはマスクを提供することも必要になるでしょう。もちろんマスクの院内での在庫の確認も大事です。

 今後、このような感染の拡大が報告されると、重症化リスクと言われる基礎疾患を抱えた患者の中で感染が心配な人は医療機関の受診をためらう可能性があります。慢性疾患で、ある程度落ち着いているならば長期処方をしておくなどして診療の負担を少し減らしておく準備も選択肢としてあがります。
 今後の想定は、武漢や中国となんら接点がない人が感染者として特定されることです。

 通常の手術や検査などの医療を維持しながら、新型コロナウイルスにも対応する体制が求められようとしています。医療機関での診療継続計画を今一度見直したいものです。自身の医療機関が地域で新型コロナウイルス感染者に対してどういう役割なのかを地域に周知することも必要になるかもしれません。

 2009年の新型インフルエンザ流行時の対応をまとめた書籍『新型インフルエンザ(A/H1N1)─わが国における対応と今後の課題』(和田耕冶・編、中央法規出版)が中央法規出版のホームページで1月30日から無料公開される予定です。今回は、新型インフルエンザではないですが、当時の対応はこれから起こりえることを想像するのにお役に立つと思います。

(著者注:2020年1月29日の朝時点の情報を基に記述)

和田耕冶(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)