日本救急医学会(嶋津岳士代表理事)と日本集中治療医学会(西田修理事長)は9月9日、エビデンスに基づく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療を支援するため、国内初のCOVID-19の薬物療法に特化した診療ガイドライン(COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations)を両学会のホームページで公開した。

 同ガイドラインは、COVID-19を巡り玉石混交のエビデンスが存在する中、臨床医が確実性の高いエビデンスを選択できるよう、最新情報を提供するもの。両学会合同の日本版敗血症診療ガイドライン特別委員会(委員長:江木盛時神戸大院麻酔科学准教授、小倉裕司阪大院救急医学准教授)が作成した。

■軽症患者へのアビガン投与を「弱く推奨」

 ガイドラインは、COVID-19への効果が期待されている主な薬物療法について現時点の推奨の強さを提示。①「酸素投与を必要としない軽症患者」に対しては、抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(商品名:アビガン)の投与を「弱く推奨」、②「酸素投与/入院加療を必要とする中等症患者、人工呼吸器管理/集中治療を必要とする重症患者」に対しては、抗ウイルス薬レムデシビル(商品名:ベクルリー)の投与を「弱く推奨」、ステロイド薬デキサメタゾン(商品名:デカドロンほか)の投与を「強く推奨」─としている。

 COVID-19患者への抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(商品名:アクテムラ)の投与については「現時点では推奨を提示しない(no recommendation)」と判断を留保し、「推奨を提示するためには今後の質の高い研究の結果を待つ必要がある」とコメントしている。

 COVID-19 患者への抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(商品名:プラニケル)の使用については、投与による害が利益を上回ることから「投与しないことを強く推奨する」としている。

 日本感染症学会が作成している「COVID-19に対する薬物治療の考え方(第6版)」では、抗ウイルス薬などの使用について「低酸素血症を伴わない軽症者では推奨しない」としているのに対し、軽症患者へのファビピラビルの投与を「弱く推奨」としているのがガイドラインの特徴の1つ。

 この点についてガイドラインは、ウミフェノビル(国内未発売)と比較した中国のRCT(ランダム化比較試験)を根拠に「利益と害のバランスは軽症患者に対してはわずかにファビピラビル投与の利益が勝ると判断した」とコメント。ファビピラビルの安全性については「重篤有害事象については重大な悪化はない可能性が高いが、従来指摘される催奇形性については留意すべき」としている。

■内容は随時更新、「常に最新版の利用を」

 両学会は、今回のガイドラインを「迅速作成かつオンタイム更新を実施するRapid/Living recommendations」と位置づけ、随時更新していく方針。医療従事者に対し「常に最新版の情報を利用すること」を求めている。