日本感染症学会(理事長:四柳宏東大医科学研究所感染症分野教授)と日本化学療法学会(理事長:松本哲哉国際医療福祉大感染症学講座主任教授)は9月2日、両学会理事長の連名で「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」を取りまとめ、加藤勝信厚労相に直接提出した。

 提言は、新型コロナ感染症の急速な拡大で医療は危機的状況にあるとし、この状況を打開するためには「ハイリスク者以外の軽症者にも投与できる抗ウイルス薬の臨床現場への導入が必要」と指摘。

 「緊急承認制度」の枠組みで塩野義製薬が承認申請している新規抗ウイルス薬「ゾコーバ錠」(一般名:エンシトレルビル フマル酸)を念頭に、「国産の新型コロナ感染症治療薬」を早期に緊急承認するよう強く求めている。

■「抗ウイルス効果を重視すべき」

 ゾコーバ錠については、7月20日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会・医薬品第二部会合同会議の審議で、臨床試験で抗ウイルス効果は示されているものの、臨床症状の改善効果までは確認されていないことなどが問題視され、緊急承認が見送られている。

 両学会の提言は実質的にこの判断の見直しを求めるもの。「変異株の出現に伴い、臨床所見が大きく変化している今、抗ウイルス効果を重視する必要がある」「国民の置かれた状況は7月20日の時点と比較して急速に悪化してきている」などとして、「今一度、緊急承認制度の適用を国が迅速に検討する時ではないか」「国家安全保障、創薬・育薬の観点からも一刻も早い承認が必要不可欠」と訴えている。

■四柳理事長は治験に関与、学会内からも批判の声

 感染症学会の四柳理事長は、ゾコーバ錠の臨床第2/3相試験の治験調整医師を務めており、7月20日の合同会議にも参考人として出席している。「現時点では有効性が推定できない」とした薬事・食品衛生審議会の判断の見直しを求める提言を理事長名で出したことは医療界に波紋を呼び、同学会の会員からも強い批判の声が上がっている。