日本感染症学会(四柳宏理事長)と日本化学療法学会(松本哲哉理事長)が9月2日に加藤厚労相に提出した「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」に対し医療界から疑問や批判が噴出している問題で、両学会は9月8日、塩野義製薬の新型コロナ感染症治療薬「ゾコーバ錠」(一般名:エンシトレルビル)の緊急承認を求めた理由などを記した「補足説明」を公表した。

 両学会の提言は、7月20日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会・医薬品第二部会合同会議で「現時点では有効性が推定できない」として緊急承認を見送る判断がなされた新規抗ウイルス薬「ゾコーバ」について、「国民の置かれた状況は7月20日の時点と比較して急速に悪化してきている」などとして「一刻も早い承認」を求めたもの。

 感染症学会の四柳理事長は「ゾコーバ」の治験調整医師を務めており、7月20日の合同会議にも参考人として出席していることから、利益相反がある医師が「有効性が推定できない」と判断された新薬の承認を理事長名で求めたことに対し、会内からも強い批判の声が上がっていた。

■「ゾコーバは重症化リスクのない患者にも投与できる」

 「補足説明」の中で両学会は、提言に対し「会員からご質問・ご意見を頂いている」として、提言取りまとめのプロセスや提言を出した理由などを説明。

 それによると、提言案は、両学会から選出されたメンバーで8月中にウェブ会議などを経て作成し、両学会の役員全員に提示。役員からは様々な意見が出されたものの、提言提出への反対意見はなかったことから、修正の上、8月下旬に最終案が取りまとめられた。

 国内で現在使用されているファイザーの「パキロビッドパック」(一般名:ニルマトレルビル/リトナビル)やMSDの「ラゲブリオカプセル」(一般名:モルヌピラビル)は投与対象が重症化リスクを有する者に限られているのに対し、「ゾコーバ」は「重症化リスクを有しない患者にも投与できる」とし、「若い世代でも後遺症等で多くの方が苦しんでいる状況を考慮すると(ゾコーバを)投与可能にすることが必要と考えた」としている。

 審議会が見送る判断をした「ゾコーバの緊急承認」をあらためて求める提言を出したのは、「60歳以下のリスクのない方に対する効果が期待され、その結果感染・健康被害の拡大が防止できる薬であるかどうかの確認が十分行われたように思えなかったことがきっかけ」としている。

■提言作成に関わった3役員が治験に関与

 「補足説明」は利益相反の問題には言及していないが、「(提言は)製薬企業等への利益を目的としたものではない」と強調。その上で、提言作成に関わった感染症学会理事長の四柳氏(東大医科研感染症分野教授)と同学会理事の大曲貴夫氏(国立国際医療研究センター国際感染症センター長)はゾコーバの治験調整医師を務めていること、感染症学会理事・化学療法学会理事の迎寛氏(長崎大院呼吸器内科学分野教授)はゾコーバ治験における医学専門家を務めていることを明記している。